7月25日の花:ハナザクロ=安息
恋次/BLEACH




「恋次さんッ!!」

悲鳴のようなお前の声が背中を突き刺す。
けれど俺は立ち止まる事は出来ない。
俺を見損なっていいから、だから、追うな。


お前が配属されたばかりの頃、いつも緊張してびくびくしてる姿が気になって、時々声を掛けていた。
そうしたらすっかり懐かれて、気付けば周りの奴等がお前を俺の付き人だと思うくらい一緒にいる時間が増えた。
恋次さん、恋次さんてヒヨコみてえにちょこちょこ俺の後を付いてくる姿が嬉しくて、自分でも驚くくらいお前を大切に思ってたよ。
毎日寝癖で髪がぴょこぴょこ跳ねてるから髪留めでもしたらどうだって何気なく言ったらその日の夜にはあの髪留めを着けてやがった。嬉しそうに。
ある時、片眉に刺青を入れたと嬉しそうに報告してきた時はつい怒鳴りつけてしまった。
だけど、それ以上に嬉しかった。
そこまで懸命に慕われて、悪い気するわけねえだろ。
俺に怒鳴られてしゅんとしちまった姿が尻尾丸めた小犬みたいで、俺は思わず笑っちまって。
ああもう俺の負けだ。
えへへ、と照れたように笑うお前の髪をがしがしと掻きまわした。
後味の悪い任務の後でも、お前が入れる茶がうまくて落ち着いた。
お前の存在は、俺を随分助けてくれたんだ。
だから、お前は何も知らなくていい。
俺はルキアを助けに行く。それは重罪だ。
けれど話せばきっと、お前は俺の味方をするだろう。
俺の力になろうとするだろう。
だから、お前には何も言わねえ。
お前はそのままでいろ。
俺の為に罪に問われる、なんて事、あっちゃならねえ。
お前は俺の中の、数少ない、暖かい記憶なんだ。
だから、お前は置いていく。
お前は何も知らなくていい。

「恋次さんッ!!」

悲鳴のようなお前の声が背中を突き刺す。
けれど俺は立ち止まる事は出来ない。
俺を見損なっていいから、だから、追うな。

 

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