7月31日の花:バラ=愛らしい
チャド、一護/BLEACHパラレル




茶渡泰虎には零番隊副隊長だった頃からの習慣がある。
それは現在の地位、第三席副官補佐になってからも変わることはない。
チャドが副官控え室へ入ろうとすると、後ろから声を掛けられた。
「おはよう、茶渡くん」石田だ。
「随分早いんだね…それは?」
チャドが片手に持っている丸盆、そしてその上の湯飲みに気付いて小首を傾げた。
「…一護に」
「黒崎に?まだ寝てるんじゃないか?」
するとチャドは曖昧な笑みを浮かべ、そうだな、とだけ答えて扉の向こうに消えていった。
副官控え室を抜け、隊長室、更にその奥の扉の向こう。
しんとした短い廊下。冷ややかな空気。
障子を静かに引く。暗い室内。
「……」
チャドはより一層物音には気をつけながら室内に身を滑り込ませ、障子を閉じた。
部屋の中央に敷かれた布団の上で、胎児の様に身を屈めて寝ているのは零番隊隊長である黒崎一護だ。
これがチャド以外の誰かだったなら、相手が隊長室に入る頃には既に目を覚ましているのだが、チャドの霊圧はそれに値しない。
チャドは、眠っている一護に近づくことを許された唯一の者なのだ。
「……」
チャドは一護の枕元に膝を付き、丸盆を少し離れたところに置いた。
「…一護」
その萱草色の髪にそうっと指を差し込み、愛しそうに撫でると微かに一護の瞼が震え、薄らと開かれた。
「…ぅー…」
返事らしき寝惚けた声にチャドは微かに笑みを浮かべ、髪から頬へと手を滑らせた。
「おはよう、一護」
「……ぅス…」
掌の温もりが気持ち良いのか、掌に擦り寄りながら一護はまた不明瞭な声で応じた。
「…のど、乾いた…」
「待ってろ」
独り言のような呟きに、チャドは一護の頬から手を放し、丸盆の上の湯飲みを取る。
湯飲みの木蓋を丸盆に置き、のっそりと身を起こした一護に湯飲みを手渡した。
「さんきゅ」
中を満たすのは暖かなお茶ではなく、ただの冷たい水。
一度水出し茶にしてみたところ、水でいいと言われた。
強制されてやっているわけではなく、寧ろ自分から始めたこの毎朝の習慣。
まだ一護の心中の瑕が膿んでいた頃から始まった。
あれからもう随分経つ。
最近になって漸く一護の瑕は瘡蓋が出来始めたような気がする。
いつかそれも自然と剥がれ落ち、僅かな傷痕だけを残して癒えたら善い。
そう願いながら、毎朝訪れる。
そして、自分たちが新たな潤いとなれたら善い。

 

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