8月1日の花:アサガオ=愛情の絆
更木、やちる/BLEACH




「剣ちゃん剣ちゃん剣ちゃぁああん!!」
剣八が十三番隊詰所の屋根の上で昼寝をしていると、一刻ほど前から姿を消していたやちるがよじ登ってきた。
「みてみてみて!!」
「あー?」
やちるは剣八の腹を跨いで座り、手にしていた小さめの紙袋を眼前に付きつけた。
「そーちゃんにこんぺいとー貰ったよ!」
「藍染のヤロウが?」
「五番隊の会議でお茶と一緒に出たんだってー。余ったのをね全部貰ってきたのー」
貰ってきたというより、恐らくは駄々を捏ねてあるだけ強奪してきたのだろうがとにかくやちるは好物のこんぺいとうを貰えて御満悦のようだ。
「剣ちゃんも食べる?」
剣八が甘い物は余り好まない事を知っていてもやちるは聞いてくる。それは「もしかしたら食べたい気分かもしれない」という思いから来るものであって、別に嫌がらせではないし、剣八もそれは理解している。
「一粒だけな」
だから余程食べたくない時でない限り剣八はほんの少しだけ貰う。
「うんっ」
こうしてやちるが嬉しそうに笑うからだ。
「剣ちゃんはね〜…」
やちるは逆三角形の紙の器を揺らしながら色取り取りのこんぺいとうの中から藤色のものを一粒摘まんで剣八の口元へと持っていった。
「剣ちゃんは藤ね」
剣八の口の中へそれを放り込み、そして明るい黄緑色の粒を数粒、自分の口の中へ放り込む。
「あたしはすずらん〜」
かりり、とやちるの頬から軽やかな音がする。
剣八も口の中のそれを噛み砕いた。「砂糖の味しかしねえ」
「えー、ちゃんと味違うんだよ〜!」
「どれもおんなじだろ」
「違うもん、名前もちゃんとそれぞれあるんだもん」
これが紅葉でこっちがさっき剣ちゃんが食べた藤なんだよ、と説明されても剣八にはすべて同じ砂糖の塊にしか見えない。
が、結局やちるはざざーっと一気にこんぺいとうを流し込むように食べてしまう。
やちるの言う通り味が違っていたとしてもこれでは意味が無い。
剣八はそう思ったが面倒なので言うのを止めた。
口の中にはまだこんぺいとうの甘ったるい味が残っている。
やちるが好きそうな食いもんだ。
剣八は改めてそう思った。

 

戻る