8月6日の花:ジャーマンダー=愛敬 前零番隊/BLEACHパラレル |
零番隊の残り二人の隊員は、一護を見るなり 「「ほーぉ、これが噂のイチゴくん」」 と声を揃えて言った。 「一護の発音は越後と同じ発音です」 一護が引き攣る声で訂正すると二人は「悪い、悪い」と笑った。 「俺が副隊長のカイカワトキクニだ。甲斐性の甲斐に川の字の川、時間の時に難しい方の国の字」 よろしくな、と右手を差し出したのはひょろりと背が高く、収まりの悪い薄茶色の髪を後ろで一つに括った少し釣り目がちの男だった。 よろしく、と握り返した掌は大きく、その体格の様に指も細長かった。 「はじめまして、あたしは第三席副官補佐のコガラスキョウヤ。確乎たる、の乎に鳥の烏、京都の京に谷で乎烏京谷。男みたいな名前だけどご覧の通り女です。よろしく」 控えめな笑顔と共に右手を差し出すのは、艶やかな黒髪を後頭部高くでお団子に結い上げ、余った部分を首筋まで垂らしている女性。 甲斐川は二十代前半、乎烏は二十代後半くらいだろうかと見当を付けながら一護が同じ様に握り返すと、想像した通り乎烏の手は如何にも女性の手、という柔らかさと細さを以って一護の手を迎え入れた。 「それじゃ、零番隊総員四名揃った所で!宴会に移りましょうか!」 「「イエッサー!!」」 浦原の声に甲斐川と乎烏の嬉々とした声が重なる。 「さあ行くよー!」 「今日は呑むぞー!」 「え、ちょ、あのっ…」 隊長室へと向かう浦原の後に従う二人に左右の手を取られた一護は、引っ張られるままに三人の後に付いていくしかない。 「一護ちゃんはお酒得意?」 「つか一護って幾つなんだ?」 「十五…」 「「若っ!!」」 心底驚く二人の声に浦原の「そりゃそうですよ」という声が割って入る。 「黒崎さんは昨日死んだばかりですからね。アタシらと違って見た目通りの年齢なんですヨ」 「あ、そうよねェ」 「はあ…」 尸魂界の時間の流れについて説明されていない一護はわけがわからないまま曖昧に肯く。 そして辿り着いた隊長室の床に四人は座り込み、隊長、副隊長、副官補佐が椅子の下やら机の中やらから取り出した酒瓶と乾菓子やら豆やら漬物やらのツマミを並べて一護を唖然とさせた。 浦原は自分をここへ導く際、この詰所に移ってきたのはつい三日ほど前だと言っていた筈だが、彼らのそれは、まるでもう何年も詰めているような振舞いだ。 「ほい、一護。最初の一杯くらい付き合えよ」 「あ、ども」 そうこうしている内に酒に満たされたお猪口を渡され、一護は零さない様にそれを受け取った。 「この瓶が冷茶だから、無理してお酒呑まなくてもいいからね」 「ッス」 それでは、と浦原の声に一同の視線が集まる。 「黒崎さんの入隊を祝って…」 「「「かんぱーい!」」」 お猪口がぶつかり合い、多少なりとも酒を飛び散らせながら夜明けまで続く宴会は幕を開けた。 |