8月7日の花:ネメシア=正直
前零番隊/BLEACHパラレル




一護が零番隊に籍を置く事になった日から五日ほど前。
朽木白哉を隊長とする六番隊でちょっとした騒動があった。
甲斐川時國四席。
彼が朽木隊長に、一言で言うなら「てめえにゃついて行けねえっつーんじゃアホンダラー!」な罵声を浴びせたのだ。
事の起こりは六番隊の定例会議での事だった。
他の隊では如何だか知らないが、六番隊では隊長、副隊長以外が口を開く事はない。
まず副隊長が開会を宣言する。
そして隊長が任務に就いてなどの伝達事項を淡々と口頭のみで説明する。
隊長が全て語り終えたら副隊長が閉会を宣言。終わり。
質疑応答の時間はない。告げられた内容で全てを理解しろという事だ。専制君主そのものだ。
仮令勇気を振り絞った誰かが質問をしても冷たく見下されるだけで答えなどまともに返っては来ない。
白哉の気性を知る隊員は仕方なく黙って従っていたが、甲斐川四席がとうとう爆発したのだ。
始めは質疑応答の間くらい設けてはどうかという進言だったものが、それを冷ややかに斬り捨てる朽木白夜。気が長い方ではない甲斐川四席が怒鳴り散らすまでに時間は掛からなかった。
果てにはお前のような人間の下で働くのは金輪際御免だと吐き捨て会議室を出ていったのだ。
白哉も去る者追わずな無関心さで何事も無かった様に副隊長に閉会宣言を命じた。
その頃の甲斐川四席は会議室を飛び出したその足で移動願いを出しに行った。
六番隊以外なら何処だって良い、と。
それから二日後、辞令が降りた。

六番隊第四席/甲斐川時國/本日ヲ以テ零番隊ヘノ移動ヲ命ズ

……零番隊?
何度見直しても零番隊と明記されている。
通りがかった同僚(最早「元」同僚ではあるが)に読ませても矢張り零番隊。
白哉の元へ赴いても予想通り「そこに書いてある通りだ」との応え。
後悔するぞ。隊長室を後にする甲斐川の背に掛けられた言葉。
甲斐川は振り返る事無く部屋を出ていった。彼の隊に居るよりは遥かにマシだと。
すると見計らったように十三番隊隊長である浦原喜助が声を掛けてきた。
何と彼もまた、十三番隊を脱退し(隊長だというのに)、その代わりに零番隊の隊長となったのだという。
しかも彼の説明によると甲斐川は副隊長らしい。
ただし、隊員数四名の中で、の話だが。
そして甲斐川は浦原に連れられて零番隊詰所へ向かった。
そこには零番隊の三人目が既に二人を待っていた。
甲斐川は彼女を一応は知っていた。
乎烏京谷。元々は九番隊第五席で、同隊隊長の東仙要と親しい。
その程度の認識だ。
だがどうやら向こうも甲斐川の事はその程度の認識らしかった。
そこで漸く甲斐川は己が零番隊なる隊に所属する事になった理由を聞かされた。
甲斐川の斬魄刀は目立って変わっているわけではなかったが、零番隊の隊員を誰にするかという時点でタイミング良く移動願いを出したが為に選ばれたらしい。
そして零番隊の役目は、四人目の隊員となる予定である「黒崎一護」という名の死神の教育と監視。
そのための零番隊なのですよ、と零番隊初代隊長となった浦原喜助は面倒くさそうに肩を竦めた。

 

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