8月8日の花:エリカ=孤独
前零番隊/BLEACHパラレル




あたしは真央霊術院に入学してすぐに卒業した。
成績は目立って良いというわけでもなかったし、流魂街出身だったから家柄も何も無い。
だけどあたしが他の子と決定的に違う事に気付いたお上の人たちはあたしを強制的に卒業させ、護廷十三隊に入隊させた。
あたしの斬魄刀は、二つある。
斬魄刀の真の姿が二振りの剣へと変わる事は有り得る。ただし、それはやはり一つの物が二つに分かれた結果だ。
だけどあたしのは違う。
名前も二つあるのだ。
全体的に白っぽい方が「白姫」
同じように黒っぽい方が「黒武」
真の姿は、斬る投擲武器と言われるチャクラム。
平ぺったいドーナツ型のそれをくるくるっと人差し指で回して勢いをつけて投げたり、フリスビーみたいに投げる事も出来る。
まあとにかく、毛色の違ったあたしは十二番隊に配属され、隊員とは名ばかりの実験動物となったわけだ。
いやー参った参った。
もう二度と経験したくない事ばかり山積みだよ、十二番隊時代は。
思い出すのも恐ろしい。てうかよく耐えてるなあ、ネムちゃんは。
ともあれ、結局はあたし自身の魂魄に原因があるのか斬魄刀自体に何かあるのかすら解明できないまま(涅隊長はそれはもうヒステリー起こしまくりだ)時間ばかりが過ぎていって、お上の人たちは漸く諦めたらしい。
あたしは九番隊に移籍する事になった。
その頃には涅隊長の特訓(絶対違う)の成果もあり、斬魄刀の解放も出来るようになっていた。
それでも鬼道はからきし、戦い方なんてさっぱりなあたしは九番隊入隊時は末席もいい所だった。
そんなあたしの面倒を見てくれたのが、当時七番隊副隊長だった東仙要だった。
鬼道や、本来なら真央霊術院で学ぶ筈だった事を分かり易く教えてくれた。
東仙要はあたしの教師であり、初めての友達だった。(始めから副隊長クラスだって知ってたらどうなったかは知らないけど。今では自分の無知に感謝だ)
そしてあたしが九番隊七席まで駆け上った頃、当時の隊長が去って変わりに隊長として配属されたのが要だった。
あたしは今まで以上に頑張った。第二席になり、要の副官になりたかった。
待っているという要の言葉を励みに、あたしが第五席まで出世した時。

九番隊第五席/乎烏京谷/本日ヲ以テ零番隊ヘノ移動ヲ命ズ

あんだとコラ。つーか零番隊って何だ。初耳なんですけど。
要は、当然知っていた。
辞令を片手にやってきたあたしに、すまないと謝った。
先日、現世で異常な魂魄を持つ人間が発見された、と。
今までは魂の奥底に潜んでいて発見されなかったのだろうが、ここ最近になって力が強まってきているのだと。
その人間を迎え入れ、こちらで管理する為の隊。それが零番隊だと。
要が悪いんじゃない。それは分かってる。
だからあたしは大人しく辞令に従った。
九番隊を、要の元を離れ、あたしは零番隊詰所へと向かった。
通された部屋で待っていると、二人の死神がやってきた。
十三番隊隊長浦原喜助と六番隊第四席甲斐川時國。
その取り合わせですぐ分かった。
彼らも零番隊に飛ばされたのだと。
浦原喜助は開発技術局きっての変人だし、甲斐川時國は先日あの朽木隊長に罵声と絶縁状を叩き付けたと噂される死神だ。どいつもこいつも曰く付きばかりだ。
そして浦原はやはり零番隊隊長らしく、そして甲斐川が副隊長となった。あたしは第三席副官補佐。ていうか三人しか居ないし。
で、その浦原隊長から大まかな説明がされた。
零番隊四人目の隊員、「黒崎一護」
毛色が違うだけで尸魂界に連行され、死神としてこの世界に閉じ込められるのね。
少しだけ、親近感。嫌な親近感だわ。
せめて涅隊長に弄られない事だけを祈るよ。あれは辛い。
それにしても、とあたしは隊長となった男を見る。
ホント、やる気なさそうなツラしやがって。
零番隊って書類業務どれくらいあるんだろう。
この隊長はきっとやってくれないだろうし、甲斐川副隊長はそういうの苦手だろうし。(見た目的に)
あたしがやるのかなあ…。
そういう意味では不安の尽きない零番隊だとあたしは溜め息を吐いた。

 

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