1月3日の花:ハボタン=自己愛
京、ユキ/幼少期




ずっとそれが当たり前だと思っていた。
ユキの考えている事が何となく分かる。
ユキも、京の考えている事が何となく分かる。
近くに居れば気配を感じる。
京が怒ればユキもイライラしたし、ユキが笑えば京も笑った。
周りは大人ばかりで、子供は自分達だけだった。
だから他の子供たちとはそうでない事に、気付く事はなかった。
そしてそれが当たり前じゃないと知ったのは、やはり小学校に上がってからだった。
父から他言無用と言われていたから、二人がそれを表立って現わす事はなかった。
その為に子供たちの輪から外れる事はなかったけれど、やはり京は他の子と自分達は違うのだと漠然と感じていた。
それは優越感ではなく、疎外感だった。
けれどユキはそれほど気にしていない様だった。
だから、京も出来るだけ気にしない様にした。
自分が落ち込んでいては、ユキを悲しませてしまうから。
ユキが京を大切にしてくれるように、京もユキがとても大切だった。
いつか自分とユキが結婚するのなら、それでも良いと思うほど。
けれどそんな話を父や祖父にすると、彼らは決まって曖昧な表情を浮かべるのだ。
「やはり分かつべきではなかったのやも知れぬ。しかしお前はたった一人の跡継ぎ。例え、真に大蛇が甦るとしても人柱にするわけにはいかぬ…」
どうしたものかと溜息を吐いた祖父の皺くちゃの顔。
相変わらず祖父の言葉の多くは理解の範疇を越えた単語で埋められていたが、これだけはわかった。
祖父や父の言う「伴侶」とは、自分が理解している伴侶の意とは違うのだという事。
そして自分とユキが結婚する事は、いけない事なのだ。

 

 

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