1月7日の花:ミスミソウ=自信 庵/96 |
耳障りな悲鳴に舌打ちすると、両隣で微かな笑い声が上がる。 「おやおや、八咫のはもうお終いかい」 黒いワンピースに赤のベストを纏った、ブルネットの髪をざっくりとしたショートカットにした女が嘲笑うように言う。 「俄仕込みのお嬢ちゃんにしては頑張ったんじゃないかしら?」 同じく黒いワンピースにこちらは白いベストを重ねた、長いブロンドヘアを結い上げて後頭部で纏めている女がからかうように笑う。 どちらも目を見張るほどの美女だ。その顔の造りは勿論の事、ボディラインも完璧といえるだろう。 だが、その二人を両脇に従えている男はそれに見向きもしない。 風にその赤い髪を靡かせながら、その視線は只管に半壊したスタジアムの中央へと向けられている。 そこには、アルバ風の牧師服を纏った男と、それに対峙する青年。 彼はぎゅっとそのグローブをはめ直し、そして地を蹴った。 男の風と、彼の紅い炎が舞う。 その光景を、食い入るように見ている。瞬きすら惜しむように。 「ねえ、バイス」 ブロンドの女がブルネットの女に問う。 「坊やはゲーニッツを倒せるかしら?」 「炎と風。相性は良いとも悪いとも言える組み合わせだ。結局は経験の差が出てくる。とするとゲーニッツの方が上手だろうな」 「でもあの子の可愛い顔を見れなくなるのは残念だわ」 「奴に京は倒せん」 それまで沈黙を保っていた男が口を開いた。 「あら、八神。どうしてなの」 「京は俺に殺される為に生きている。奴が雑魚に殺られる事は有り得ない」 「雑魚ですって」 マチュアが可笑しそうに笑うと、バイスがやれやれと肩を竦めた。 だが、その瞬間に体を突き抜けた衝撃に彼女たちはスタジアムへと視線を向ける。 「よく見ておけ」 八神の低い声が響く。 京の体が紅い炎の衣を纏って燃え上がる。 「あれが、京の炎だ」 嬉々とし、恍惚すら滲ませながら、八神は嗤った。 アア、血ガ、騒グ。 |