1月10日の花:ギョリュウバイ=燃える思い K’、庵、京/?? |
近くに居る。 K’は絶対的な確信を持ってその路地を進む。 彼が、近くに居る。 血液が皮膚を撫でるようにざわめく。 無意識にちろりと唇を舐めた。 近い。 微かに速まる歩み。 「!」 幾つ目かの角を曲がり、K’の眼が歓喜に見開かれる。 先を行くのは、紛う事なく草薙京だ。 ふと気配に気付いたのか、京の足が止まり振り返った。 「あれ、K’じゃん」 へらりと笑う京の腕を手荒く引き寄せ、K’はその唇に食らいつくように口付けた。 「ンッ…」 絡ませたままの視線は微かに非難の色を帯びていたが、舌をその口内に捻じ込むと彼は諦めたように瞼を下ろす。 「ゥ…ん…」 暫く振りに貪る京の口内は相変わらず熱く、その熱を奪うようにK’は深く舌を絡めた。 体の奥で燻っていたものが轟と音を立てて燃え上がるのを感じる。 それは叫ぶ。彼が欲しいと。 彼の中に孵りたいと。 その声がK’の体を突き動かす。 「…っは、コラ、こんな所で…」 人通りなど殆どない路地とは言え、いつ誰が通るか分からないというのに。 だがK’はお構い無しに京をビルの壁に押し付けるとその首筋に歯を立て、グローブに包まれた手をシャツの中へと滑り込ませる。 「オイK’!聞いてっ…んっ…」 シャツを捲り上げ、指の先が胸の突起を掠めると京の表情が微かに揺れた。 掌を鼓動の上に当て、その形成した突起を親指で潰すように撫でると京の喉が微かな音を奏でる。 「…ったく…だから言っただろ、お前の負けだって」 だがK’はそれには応じず、もう片方の手で彼のベルトを外していく。 確かに、これに勝敗をつけるのだとすれば、自分は完全なる敗北を記した。 この体の全てが彼を求めるのが嫌で彼を突き放した。 けれど、そんな事をした所でこの体が大人しく彼を諦めるわけなどなかったのだ。 「草薙…」 彼の鼓動を感じてるだけでもこの体の内の炎は歓喜の声を上げる。 けれど、体はそれだけでは足りないとK’を急かす。 早く繋がりたいと。 「?!」 だが、不意に背筋を走った殺気にK’は飛び退いた。 「チッ…」 京と自分の間を駆け抜けたのは、青紫の炎。 「テメエは…」 幾ばかりか離れた所に立っていたのは、赤い髪の男。 京と対になる、月を背負う男。 「八神、庵…」 その名を紡ぐ声が憎悪を僅かに滲ませている事に、K’は自覚を持っているのだろうか。 「庵…」 京がマズイ、と引き攣った笑みを浮かべる。 「良い格好だな、京」 「う」 慌てて乱れた服を整えると静かに近付いて来た庵にその腕を取られる。 「さっさと帰るぞ」 「ちょ、庵…」 そのまま引き摺るようにして立ち去ろうとする背に鋭い声が掛かる。 「待ちやがれ。そいつは俺の獲物だ」 すると庵はひたりと立ち止まり、K’を振り返った。 「何か勘違いをしているようだ」 「うわっ」 そして徐に京を引き寄せ、後ろから抱きすくめるように腕を回す。 片方は腰に、そしてもう片方は京の首に回される。 「これは初めから俺のものだ」 そして首に当てられていたその手がK’へと向けられると同時に青紫の炎が襲い掛かった。 「くっ…!」 咄嗟に自分の炎をぶつけて相殺する。 鮮やかな青紫とくすんだ赤がぶつかり合う。 「!」 だが、その炎が共倒れる頃には八神庵の姿も、そして京の姿も消えていた。 「クソッ…!」 ガツ、とビルの壁を殴り付ける。 再びこの腕に捕らえたと思ったのに。 「草薙ッ…!」 途絶えた彼の気配に、炎が嘆いた。 |