1月12日の花:ツゲ=淡白
マキシマ、京/団地妻




別に自分はそれほど性欲が強いというわけではないと思う。
どの程度を基準とすべきかは分からないが、まあ、普通だと思う。
思う、のだが。
考えてみると、マキシマから誘って来た事は数えるほどしかないような気がする。
というか、本当に数えるほどしかない。
性欲に関して淡白。
まあ、そんな所なのだろうが。
それはそれで何となく寂しい気がする。
寧ろ、俺って魅力ない?
やっぱ女の方が良いとか?
そんな事を考えてブルーになったりして。
「……決めた」
ぐっと拳を握り、気合いを入れてみる。
「マキシマが誘ってくるまで、絶対にしねえ!」


「……ゴチソウサマデシタ」
K’かたりと箸を置くと「お粗末様」といつもの様に京の応えが返って来る。
ただし、その声は何処か不機嫌だ。
「…何か、その…嫌な事でもあったのか?」
「別に」
義弟の問い掛けをつっけんどんに返し、たんっと音を立てて箸を置いた京はさっさと空になった皿や茶碗をシンクの隅に積み重ねた。
そしてK’とマキシマの湯呑みに緑茶を足し、自分はさっさとテレビの前へと行ってしまう。
いつもなら鼻歌混じりに洗い物をする京が、座椅子型クッションの上で膝を抱えてむすっとしながらテレビを見ている。
「……」
そんな京の後姿から視線を目の前に座る兄へと向けると、問答無用でテーブルの下からその足を蹴っ飛ばした。
「いっ!」
ずずーっと呑気に茶を啜っていたマキシマの体がびくっと揺れる。
「……」
そのまま数発ガスガスと蹴り付けて漸く怒りが収まったのか、K’が「おい」と潜めた声でマキシマに問い掛けた。
「てめえ何しやがった」
「いや、ていうか、手加減して欲しか痛っ」
再び足を蹴られたマキシマは「そんなに怒るなよ」と肩を竦める。
「俺だって分からなくて困ってるんだ」
「んなモンてめえが原因に決まってんだろッ。とっとと媚び諂って詫び入れてきやがれボケ」
吐き捨てるように告げたK’は立ち上り、椅子に掛けてあった上着を手に京の元へと向かう。
するとそれに気付いた京が視線を上げた。
「もう帰るのか?気をつけてな」
「ああ」
「またな」
力無く笑う京の姿に、K’はマキシマへ一瞥をくれて部屋を出ていった。
「うわ、露骨…」
マキシマがポツリと呟く。
明日になっても京がまだこの調子だったらテメエ簀巻きにして道頓堀に沈めるぞコラ。
弟の眼はそう告げていた。

 

 

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