1月14日の花:ニオイヒバ=私のために生きて!
庵京/??




昔、八神の直系が短命だと聞いた事があった。
神楽ちずるに言われるまで、すっかり忘れていた。
俺は驚かなかった。
ただ、ああ、そうなのかと思ったくらいで。
まあコイツ早死にしそうな顔してるしな、とか。
八神の直系は短命。
その言葉に、向き合っていなかったんだと思う。
無意識に、その言葉から逃げていた。
けれど、あの日。
庵が血を吐いた日。
神楽ちずるの声が空っぽになった頭の中を木霊した。
それは、つまり。
「庵の命は、俺より、ずっと短い…」
口にして、ぞっとした。
ずっと短い?
ずっとってどれだけだよ。
一年?十年?それ以上?!
例えば、俺の寿命が六十歳とする。
で、庵の寿命が四十歳だとする。
俺は、死ぬまでの二十年を庵のいない世界で生きていかなきゃならないのか?
俺、この前、一週間くらい庵に会えなかった。
たった一週間でも凄く長く感じて、落ち着かなくて。
もうすぐ会えると思ってたから乗り切れたけどさ。
けど、庵が死んじまったらずっと会えない。
電話で声を聞く事も出来ない。
そんなの嫌だ。冗談じゃない。
でも現実。
そして現実の方がきっと酷い。
庵はきっと、あと何年も生きられない。
四十歳なんて、迎える事無く死んじまう。
庵はあの炎を使うのを止めないから。
何より、死へと向かう自分を受け入れてしまっている。
仕方ない事なのだと。
ふざけんな!
お前が俺より先に死ぬだと?
オロチの力の所為で、俺より先に!
フザケンナ!!
庵!イオリィ!!
てめえ俺のモンなんだろ!
てめえがそう言ったじゃねえか!
だったらなんでオロチなんかの所為で死ぬんだよ!
その命も俺のモンなんじゃねえのかよ!!
「ならば殺せ。今ここで、京、貴様の手で」
バカ庵アホ庵!!
違う違う違う違う!!
俺はてめえと生きたいんだよ!
明日も明後日も来年も再来年も十年後だって!
だけど実際には。
明日ですら、そこに庵がいてくれるのか…分からない。
「…庵、俺、ちょっと家へ行ってくるわ」
それでも俺は、庵と一緒にいたかった。
一緒に生きていきたかった。
本当だぜ?

 

 

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