2月6日の花:ラッパスイセン=復活、再生 庵、社、京/嵐の夜に |
京を探し手当たりを歩き回り、山の反対側に辿り着いた庵はその異変に気付いた。 「まさか…雪崩が起きたのか」 来た道を戻るようにその斜面を下っていく。 まさか、と気持ちばかりが逸る。 「京!キョオオオ!!」 庵は声の限りその名を叫び辺りを見まわす。 けれど只管に白一色のその世界に庵は舌打ちして手当たり次第に雪を掘り返し始めた。 「!」 雪の下から現れた毛並みに一瞬庵の体が強張る。 だが、瞬時に京ではないと悟って雪を更に掘り進めた。 茶の毛並みを持つその狼は雪の下で凍死していた。 何故ここに狼が。 考えるまでも無い。この狼は自分達を追って来ていたのだ。 では、京は。 「?!」 僅かに離れた所で突然雪が盛り上がり、庵は咄嗟にそこを飛び退いて間を置いた。 「だーちくしょう、参ったの一言だぜこりゃあ」 現れたのは、京より一回りは大きな銀灰の毛並みを持つ狼だった。 厄介な、と庵が舌打ちすると狼は庵に気付いて視線を上げた。 「あー?『八神』のアタマじゃねえか」 途端狼はしかめっ面をして庵を睨み付ける。 「何だ生きてたのかよ」 「京をどうした」 同じく睨み付ける庵に狼は親指でくいっと自分の足元を差した。 「このどっか」 やはりと庵が再び雪を掘り起こそうとしたその時。 「お?」 狼の声に庵の動きも止まる。二匹の間の丁度真ん中辺りの雪がもこもこと盛り上がったのだ。 ぼこ、と雪の中から一本の手が出た。 それは正しく狼の手で毛色は、漆黒。 そしてそれに続き、上半身が現れた。 それは。 「「京!!」」 雪塗れのまま呆然としているのは、確かに京だった。 |