2月12日の花:ブルビネラ=休息 ??/その他 |
タマフリの儀が近い。 「今年も、もうそんな季節か…」 梅の太い枝の上で天叢雲命はぼんやりと呟いた。 「何か気に病む事でも」 老木の声に彼は曖昧な応えを返す。 「須佐之男命の事か」 それには沈黙を以って応えとし、老木もそれ以上は追求しなかった。 「八尺瓊命が探しておる」 「え、何処」 幹から身を起こすと細い枝がすいっと一点を示した。 そこには辺りを見まわしながら歩いてくる八尺瓊命の姿があった。 「八尺瓊!」 声を上げると、それに気付いた八尺瓊がこちらへと歩み寄る。 ふわりと枝から大地に降り、そして漸く叢雲はそれに気付いた。 「何だ、八尺瓊。女体なのか」 もうそんな時期だったかと続ければ、八尺瓊は呆れたように溜息を吐いた。 「いつになればお前は月を読む習慣がつくのだ」 「仕方なかろ。私は武神なのだから。それよりも、タマフリの儀と重なるのではないのか」 「問題ない。御魂振るに性別の違いなど些細な問題よ」 「そんなものか」 「武神のお前にはわからぬだろうがな」 刺を含んだその物言いに叢雲は肩を竦めた。 「やけに突っかかるではないか」 突っかかりたくもなる、と八尺瓊は吐き捨てる。 「タマフリの儀が近いというのにふらふらしおって。飛び梅、貴様も叢雲を甘やかして風を呼ぶでない」 「ようわかったわかった。タマフリの儀まで屋敷で大人しくしておる。そう怒るな」 女体の時の八尺瓊に逆らうのは得策でないと知っている叢雲は大人しく非を認め、宥めながら屋敷へと向かった。 「タマフリの儀に供えてゆるりと休むとしよう。の、八尺瓊の」 八尺瓊は不満気だったが、今一度溜息を吐いて諦めたように彼の後に続いた。 |