3月4日の花:カルセオラリア=私の伴侶
京/2002




一緒に暮らしているといっても、俺と庵には戸籍上の繋がりはない。精々遠い親戚程度だ。
そしてみづきもマンションの電話番号をまだ覚えていない。
なのに俺の所に連絡が来た。
あの時は混乱してて、自分の事で手が一杯で疑問にも思わなかったけど、後から気付いた。
普通はそういう時って実家に連絡がいく筈だよな。
その答えは、小さな電子機器が教えてくれた。
庵の携帯電話。
着メロとか悪戯するからって俺らには絶対触わらせてくれなかった携帯電話。
アスファルトに投げ出されて傷だらけになったその小さなボディは、たった二つの事だけを記憶していた。
一つは俺の携帯電話の番号。
もう一つは俺たちの住むマンションの電話番号。
リダイアルにも着信記録にも、その二つ以外の番号はない。
それが、何よりもの庵の想い。
俺の手の中に残った、たった一つの。
取り返しに来いよ、なあ。
お前の想いはここにあるから。
俺がずっと持ってるから。
必ず取り戻しに来い。

 

 

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