3月11日の花:カルセオラリア=私の伴侶
メロ、ホキ/2002




「当たり前だろ?」
全く同じ顔立ちの二人がくつくつと喉を鳴らして笑う。
「ものっ凄く好きだぜ」
「そうそう、もう激ラブってやつ?」
「あいつがいなかったら…いや、赦してくれなかったら、俺たちいなかったし」
「草薙京が、俺たちの全てなんだ」
「京が幸せなら、それで良い」
だけど、と二人はその視線を伏せた。
彼は光だ。とても強い、輝き。
恐らくそれは自分達だけでなく、彼と出会った全ての者がそう感じたであろう。
自ら眩く光り輝く魂。
けれど光が強ければ強いほど、その足元の影も色濃いものなのだと気付いているだろうか。
とても純度の高い光と、それが生み出す影。
「だからアンタの事でコケた時が一番恐い」
「京は一度、ゲーニッツってヤツの事ですっ転んでるから」
あの光は常にたった一人しか望まない。
多くの存在に愛されていても、彼が必要とするのはたった一人の想いだけ。
風はそれに応える事無く消え去った。
それは元より定められたものだった。
彼もそれは察していた。己を満たすは風に在らずと。
だからそれを見送った。
「だけどアンタは違う」
「あの記録が正しいのなら、アンタが京の番う存在だ」
導かれるように蒼い炎の中へと身を投じた太陽。
もう二度と、違える事の無いように。
「京はさ、本当は凄く怖がりなんだ。めっちゃ臆病なワケ」
「それに加えてネスツでアタマ弄られて精神的に不安定だったのを、俺たちやみづき、何よりアンタの存在が癒してた。だけどアンタが中途半端に記憶無くしちまったもんだからめちゃめちゃグラついてんの」
だから悪いんだけど、しばらく我慢してよ。
京と同じ顔を持つ褐色の肌の少年たちは笑う。
「心ン中に溜まった膿を全部出しちまえば、京も落ち着くからさ」
「それまでちょーっと暴れるかもしんねえけど、我慢しろよ」
てめえの自業自得なんだから。

 

 

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