3月18日の花:シャスターデージー=万事忍耐
庵/2P




正直な話、あの男の事は嫌いだ。
というより、大の苦手だ。
見てくれは京に似ているのだから多少気を許しても、とは欠片も思わない。
似ているからこそ余計に腹立たしい。
人を見下しきった笑み。
関西弁に近い様な、よく分からない訛りを持つ独特のイントネーション。
その口から飛び出す粗野で傲慢な物言い。
気に入らなければ手が出る足が出るの癖の悪さ。
京と酷似した姿でそんな振る舞いをする男に好感を持てるはずも無く。
ここぞとばかりに京を猫可愛がりする姿には寧ろ憎しみすら覚えるもので。
しかしながら彼の住まいは県を二つや三つは軽く越えた先に住んでいて、滅多に姿を現す事はなかった。
彼が京の元へ訪れてもたった数日で帰っていくのだから、その数日を耐え抜けば、また暫くは平穏無事に過ごす事が可能だ。
その為に今まではこれといった問題は生じなかったのだが。
もし、例えば…そう、例えば、だ。
彼が近所に住んでいて毎日毎日京に会いに来たとしたら。
それこそ何の冗談だと問いたくなる。
有り得ない。有り得てたまるか。
超弩級のナンセンスなジョークとしか思えない。
だがその笑えない冗談が、今。
現実となろうとしていた。

 

 

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