4月5日の花:スズラン=幸福が戻ってくる 庵、京/2002 |
庵が言うには、京が夢埋で自分の中へ潜り込んでいる間の出来事は何となく覚えていると言う。 夢という形で見たらしく、それは曖昧なイメージで、目覚めてすぐの頃は覚えていたような気もするのだが、今ではぼんやりとそれらしき光景を覚えているだけだ、とも。 記憶の方は戻ってはいるのだが、未だに何処か雑然としたような感じがして違和感を拭えない様だ。 だがそれもその内落ち着くだろう、と庵は言う。 庵は、八尺瓊の存在に付いては全く驚いたりはしなかった。 知っていた、と彼はあっさり告げた。 いつ、と問えば五年前、と短い応えが帰ってくる。 五年前? そう、五年前。 五年前というと…。 ああ、と京は曖昧な笑みを浮かべた。 オロチと戦った年か。 あの時に知ったのか?俺が無式撃ち込んだ後? 俺もあの時、色々知った。 そっか…五年かぁ…。 あれから、もう五年も経ったんだな。 ……何が可笑しい? いや、だってさ、あっという間でさ…。 何つーか、意外。 意外? そう、何つの、こう、あの頃はさ、三十とか四十の自分なんて想像も付かなかった。 このまま年取らずにずっと続いていくんじゃないかって。 ま、中身は変わってない感じだけど。 確かに未だにガキ臭いからな。 誰が。 …オイコラ、誰がつってんだろ視線逸らしてんじゃねえっつの。 聞きたいか? 言う勇気があるなら言ってみろよ、おお? よせ、火災報知器が作動する。誰も貴様だとは言ってないだろう。 じゃあ誰だよ。 ………椎とか。 今思い付いただろ!つーか拳崇は正真正銘のガキだろうが! 貴様とタメだぞ。 ……誰と誰が。 草薙京と椎拳崇。 冗談はヨシコチャン。 古い。 それはアレか。てめえと拳崇がタメという事か。 何故俺を引き合いに出すのかは知らんがとにかくそういう事だ。 うわショック、俺あいつは永遠の十七歳だと思ってた。 何故十七。 ギリギリ成人指定映画観れない感じ。 ……。(何故か納得) いやもう、まいっちんぐだよマチコ先生パンチラしてる場合じゃねえって。 頭は大丈夫か。 つーか月光仮面ってぜってー捕まるよな、猥褻物陳列罪でさ。裸ネクタイにパンツ被ってんだぜ。 何か違うものを思い浮かべていないか貴様。 そうだっけ。似たようなもんじゃね? あ、そういや最近ジャンプ買ってねえ。てめえの所為だぞ。 その辺の喫茶店にでも行って読んで来い。 ヤだ。そんな他人の手垢塗れたヤツ。 あーあの続きどうなったんだろ。 単行本を待てば良いだろう。 コミックス買ってまで読みたくねえよ。あーあ。 ………。 ………。 何話してんだろ、俺ら。 下らんな。 うん、下らねえなぁ。ほんと、くだらねー。 …でもさ、なんか、楽しい。 そうか。 うん。 前は当たり前だったけど、改めてこうしてみると、さ。 なんか…良いな、こういうの。 そうか。 うん。 |