4月6日の花:アゲラタム=安楽
庵、京/2002




「みづきたちを迎えに行かないとな」
翌日の昼を回った頃、漸く京がそう告げた。
ずっと預けっぱなしだし、と苦笑する。
だが沈黙を守る庵に京は小首を傾げた。
「どうかしたのか?」
「……いや」
何処か歯切れ悪く答える庵に、京はぴんと来た。
「ははーん」
途端、意地の悪い笑みが浮かぶ。
「みづきに嫌われてないか心配なんだろ」
「……」
図星らしい。
「ま、あーんだけ嫌そうにシカトしてたしなーぁ」
わざとらしく言ってみる。
「……」
応えはない。
あ、落ち込んでるよ、コイツ。
そう気付いた途端、吹き出した。
「あはっ、ばっかでーぇ、本気でへこんでらァ!」
「……」
むすっとした庵を指差して笑う。
バカだなあ、みづきがてめえを嫌うわけ、ねえだろ。
笑いながら京はそう思う。
何てったって、俺のクローンなんだからさ。
まあとりあえず、ちょっと悔しいから言わないでおこう。

 

 

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