4月11日の花:ローダンセ=変わらぬ思い
クリス/97




覚醒して、真っ先に思ったのは彼の事だった。
僕らが目覚め始めたという事は、遠呂智が目覚めようとしているという事は、彼らもまた、覚醒しているはずだから。
そして驚いたのは、この炎。
僕はまた、炎を操れるようになっていた。
どうしてとか、考えたりはしなかった。
ただ、どうしようもない滑稽さに笑うしかなかった。
ばかげている。
炎が戻ってきたのに、会いたい相手はもう居ない。
草薙京と八神庵。
色んな資料やビデオを見た。
容姿は本当によく似ていた。
けれど声が違う。口調が違う。仕種が違う。
異なる所ばかりが気になってイライラした。
そして何より、神楽ちずる。八咫の末裔の妹巫女。
あの女だけはこの手で引き裂いてやる。
八咫の血を引く者は全員この世界から消してあげる。
ゲーニッツもゲーニッツだ。
姉巫女を殺して封印の楔を引き抜いたその時に妹巫女も殺しておけば良かったんだ。
おかげで警戒されて近づく事も出来ない。
ああ、でも。
ゲーニッツはわざと神楽ちずるを見逃したのかもしれない。
彼女は確実に彼らの覚醒を促し、そして僕らの前に引きずり出すだろうから。
でもまあ、結局の所、ゲーニッツが何を考えていたのかは僕には分からない。
ただ僕らが分かっているのは、どうあがいても僕らは遠呂智の一部であって、個々になり切る事は出来なくて、遠呂智が復活するその時、再び一つに還らなければならないという事。
これが僕らのさだめなのだという事。
そして、僕の願いは永遠に叶う事はないという事。
それだけの、事。

 

 

戻る