11月10日の花:ビオラ=誠実な愛、信頼
庵京/99




「庵ぃ、俺、明日ちょっと出掛けてくるわ」
だからみづきヨロシク。
スーパーから帰ってくるなり京はそう告げた。
「遅くなるのか」
「んー、多分。ぱぱっと終わらせてくるからよ」
「……例の組織がらみか」
庵の表情が微かに険しくなった事に気付いた京が誤魔化すように肩を竦めた。
「お前はみづきとお留守番してろよ?」
「……」
不満度MAXで睨み付けてくる男に怯まず「駄目」と京は繰り返した。
「大丈夫だって。クリザリッドのアホをボッコボコにして絶対帰ってくるから」
「……」
それでも不満気な視線の庵に、「な?」と京は笑う。
「これが終わったら三人で家族旅行でも行こうぜ!」
「家族…旅行」
珍しくぽかんとした表情と口調の庵に京が憮然する。
「何だよ、不満かよ」
「……いや」
恐らく現在庵の脳内で家族というフレーズがエンドレスで響いている所だろう。
「よし、じゃあそういう事で今晩の夕食はお前が作れ」
笑顔で野菜やらの詰まった紙袋を差し出すと、庵は無言でそれを受け取ってキッチンヘと消えていく。
どうやら子供の扱いと一緒に庵の扱いも上達した京だった。

 

 

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