11月14日の花:リシマキア=勝負好き、強気
庵京/99




結局の所、どうしたのかというと。
「あ、ケータイ発見」
やっぱりぶちのめす事にしたらしい。
庵はみづきを抱えて安全確保担当を買って出たので、ぶちのめし行為は京だけで実行に移された。
因みに京がうきうきと男をぶちのめしている姿を見たみづきは、京と同じく楽しそうにきゃっきゃと笑っていた。さすがは京の遺伝子の持ち主だと庵は思った。
「庵、どれが当たりだと思う?」
ぶちのめされた男のポケットから取り出した、幾分か厳つい携帯電話のメモリーを見ながら問い掛けると、手当たり次第に掛ければ良いという面白味の無い応えが返って来た。
「んー」
すると突然手の中で携帯電話が鳴り出し、京は危うく携帯電話を落とす所だった。
「…出て良いと思う?」
「好きにしろ」
なら出る、と京は通話ボタンを押してメタリックシルバーのボディを耳元へとあてた。
「ハロー、アナタのアイドル京サマです。…切られた」
「バカな事を言うからだ」
「冗談の通じない奴だなー。リダイアルしてやれ。…おい、突然切るなよ失礼な奴だな。…何だよ、アンタか。え?ああ、そいつならうざったかったから月に変わってお仕置きしておいた。因みにここ笑う所ね。あ、セー●ーム◎ンなんて知らないか。そんな事よりさ、尾行禁止令発令したいんだけど。いっその事堂々と隣り歩いててくれた方がよっぽど楽なんだわ正直な話。一週間くらい羽伸ばさせろっつーの。あ?おおよ。週末にはまたアメリカへ高飛びするっつーの。嘘じゃねえって。ん?ああ、俺の息子。マジっつーか本気と書いてマジと読むって感じ?俺に似てキュートだろ?オイコラそんな事よりって何だよそんな事って。え?何が脱走したって?……えぇー…?」
不良座りで回線の向こうの相手と話していた京の表情が心底嫌そうに歪む。
「で、何人脱走したんだよ…ふーん。結局何人捕まえたわけ?…ワンモアプリーズ?…マジで?!うわ最悪!想像するだけで気持ちワリィ!!え?……まあ、そりゃあ仕方ないんじゃねえの?一人二人ならまだしもさあ…可哀相だとは思うけど…うん、うん、んー、わかった。じゃあな」
電話を切るなり京は大きな溜息を吐いた。
「どうした」
「んー、どっから話せば良いんだろ。えーと、とりあえず、電話の相手はハイデルンのオッサンだった」
「あの傭兵チームの眼帯の男か」
あのハイデルンにセー●ーム◎ンネタを振った京はある意味凄いかもしれない。
「そう。でさ、この前のKOFん時に俺のクローンを大量に捕獲したらしいんだわ。三千…何体だったっけ」
三千余名の京。
さすがにそれは遠慮したいと庵は思った。
「まあいいや。それでさ、そいつら…処分、されたんだと」
「…そうか」
庵に抱えられているみづきはきょとんとして二人を見比べている。
もしかしたらこのみづきもその一人に入っていたのかもしれないのだ。
「クローンどもは基本的に殆ど意志とか無くて人形みたいだったらしいんだけど、二人だけ毛色の違ったのが居たらしいんだわ。そいつらが軍用ヘリ奪って逃亡したんだとさ。で、ここ、我らが日本にご来日されたそうだ」
「それでお前を張ったのか」
「ヘリを操縦したパイロットの話では、俺を探すみたいな事を話してたんだと。だから気を付けろってさ」
溜息を吐き、肩を竦める京に「それで」と声が掛かる。
「どうするつもりだ?」
「どうもしねえさ。来たらその時考える」
すると愛らしい声が二人の間に割って入った。
「みーき、おなかすいた」
不機嫌さの滲んだ表情と声に二人はそういえば昼食がまだだった事を思い出した。
「よーし、じゃあどっか食いに行こうぜ」
京は庵からみづきを受け取り、その柔らかな頬に己の頬を合わせた。

 

 

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