11月18日の花:ヒース=孤独
山崎京/97




その夜、山崎は明かりも点けずに自室に戻った。
付けっぱなしになっていたベッドサイドのランプだけが辛うじてその周辺を照らしている。
山崎は担いでいた京をベッドに放り投げ、自分もベッドに上がった。
二人分の重みを受けたベッドのスプリングが悲鳴を上げる。
山崎は眠ったままの京の両手首に手錠を掛け、その鎖に更に太い鎖を通してベッドに繋いだ。
そして京のズボンのベルトを匕首で両断し、そのズボンにに手を掛けて下着ごと引き摺り下ろした。
それを紙屑でも放る様に投げ捨て、京のトレードマークとも言える短ランも剥ぎ取って放り投げる。
「めんどくせぇ」
山崎は匕首の切っ先を京のアンダーシャツに引っ掛け、一気に切り裂いた。
襤褸布と化したシャツを辛うじて引っ掛けている京の体は暖色の灯りに照らされているにも関わらず白く艶めかしい。
「生っちょろい体しやがって」
喉の奥で引っ掛かったような笑いを洩らしながら山崎は京の腹に舌をはわせた。
べろりとまるで犬の様に舐め上げる。
その舌が這い上がり、胸の突起に辿り着くと微かに京の喉が鳴った。
それすらも可笑しいのか、山崎の喉が再び微かな笑いを洩らした。
そしてその舌は再び腹へと下っていき、時折止まってはきつく吸い上げた。
それはキスマークなどと可愛らしいものではなく、あからさまに鬱血した赤黒い痕だった。
山崎の隠そうともしない興奮した息遣いとベッドの軋む音、そして時折混じる湿った音と笑い声が室内を満たす。
山崎は己のズボンのジッパーを下ろし、その猛った自身を取り出して京の両脚を抱え上げる。
「ちっ…」
だが、全く馴らされていないそこは山崎を飲み込もうとしない。
山崎は苛立たしげにチェストからジェルを取り出して猛る己自身に塗り付ける。
掌に付着したジェルもそのままに京の脚を抱え直し、山崎は再度そこへ自身を押し当て、一気に押し込んだ。
「っ!!」
その痛みと圧迫感で一瞬の痙攣と共に京の目が見開かれる。
「よぉ、お目覚めかよ」
にぃやりと笑う山崎。
一瞬、京は何が何だか分からないといった表情をしたが、数秒を掛けて漸く現状を把握した。
「てっめえ…!」
繋がれた両腕を動かそうともがき、金属の擦れる音が響く。
「ぃひやははっ!逃げられねえよ!!」
「いっ…!」
遠慮などという言葉に縁遠い山崎が腰を乱暴に前後させると、それに合わせて京の喉が音を奏でる。
けれどそこに決して快楽の色はなく、痛みと圧迫感に喘ぐ声だった。
「ひぃやははははは!!!」
京の苦痛に喘ぐ声と山崎の狂気じみた笑い声が室内に響き渡る。
「っう、あっ…!」
冷たくどろりとしていたジェルが緩くなって溢れ出し、山崎の動きに合わせたその淫猥な水音が京の耳に滑り込む。
「あ、あっ、くっ…」
京は自分の中に渦巻くそれが怒りなのか屈辱なのか悲しみなのか、またはその全てなのか理解できないほど自分を犯す男を憎んだ。
「く、そっ…!」
その激しい律動に気を失いそうになる。
けれど、この男の前で気を失うのは更なる屈辱の塗り重ねになると京は唇を噛み締める。
ただひたすら山崎の衝動が収まるのを待つしかない。
(いおり…)
ただ一つ京の意識を繋ぎ止めるのは、八神庵の存在だった。
ここから逃げ出さなくては。
彼の元へ、帰らなければ。

 

 

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