12月2日の花:ポインセチア(ピンク)=慕われる人
京、クーラ/2000




クーラという名前は、多分ダイアナかフォクシーが付けてくれたんだと思う。
調整層から出て、みんなが私をアンチK’とか、ナンバーとかで呼んだけれど、ダイアナとフォクシーだけはクーラって呼んでくれたから。
私の力はママの力を元に作られたんだって聞いた。
おじさんたちの話は難しかったけど、何となくわかった。
ママの力は炎を生み出す力で、その力を移植されて生き残った人が何人かいるんだって。
その人たちが裏切った時の対抗策として、私は生み出されたんだって。
でも私、「できそこない」なんだって。
おじさんたちがそう言ってたの。またダメだったって。
いっぱい氷を生み出すと私、おかしくなっちゃうから。
でも、私が一番うまく出来たんだって。だから処分しないんだって。
それから、ダイアナが私のトモダチとしてキャンディをくれたの。
その時はまだキャンディって名前が無くて、どんな名前にしようかなって思ってたの。
そんな時だった。ママと初めて会ったのは。
「うおっ!寒ぃ!!何だこの部屋!!」
ママは私の部屋に入ってくるなりそう叫んでた。
私には丁度良い温度も、ママには寒かったみたい。ママは部屋の中なのにコートをしっかり着込んで私たちの前にやってきた。
「あなた誰?」
「彼は草薙京です、クーラ。プロジェクトKのオリジナルです」
「この人が?」
「そういう事。なんか知んねーけど、これも実験の一環だとよ」
ママが頻りに寒い寒いって繰り返すからクーラーの電源を切ったの。
そうしたらママ、
「さんきゅ」
って嬉しそうに笑ったの。
ダイアナとフォクシー以外の人が笑った所、初めて見たんだ。
おじさんたちはいっつも不機嫌そうな顔とかだったけど、ママは私ににこって笑ってくれたの。
それから、少しだけお話しをしたの。
この子の名前がまだ決まらないのってキャンディの事を相談したら、
「お前の好きなもんって何だ?」
って聞かれた。だからイチゴシャーベットとか、棒の付いたキャンディとか、アイスクリームとかが好きって答えたの。
そうしたらママ、うーんって考え込んで、
「よし、じゃあキャンディだ」
って名前を付けてくれたの。
「好きなもんの名前の方が覚え易いし愛着が湧くだろ?」
嬉しくって、ありがとうって抱き着いたの。
そうしたら、ママもぎゅって抱きしめてくれて。
とっても暖かかったの。
ダイアナやフォクシーみたいに柔らかくないけど、凄く安心できたの。
暖かくって、ぽかぽかして。
全身がふわーってしたの。
「うわっ?!」
ママがびっくりしたような声を上げたから、私もびっくりしてママの胸から顔を上げて、やっぱりびっくりした。
何時の間にか私の髪が力を使う時の色に変わってて、部屋の中を氷の粒が飛び交ってたんだもん。
「ダメ!」
誤作動しちゃった力を抑えようとすると、氷の粒は一斉に砕け散った。
「……」
ママが小さく呟いた。
それが、私が聞いたママの最後の言葉だった。
私の力の誤作動をモニターで見てたらしいおじさんたちがやってきて、私とママを強引に引き離しちゃった。
私はもっといっぱいママとお話ししていたかったけど、おじさんたちがまたすぐに会えるからって言うから我慢したの。
ママを困らせちゃいけないって思って。
でも、ママがまた私の部屋に来てくれる事はなかった。
ママと私がお話しできたのは、私の不安定な力を安定させる為だったんだって。
ママの炎を移殖された人も、ママとお話ししてからは力が安定したからって。
じゃあ、あの時ふわーってしたのがそうだったのかな、って思った。
ママの炎を移殖された人も、こんな感じがしたのかな。
その人は、もっといっぱいママに会ってるのかな?
私はもう、ママに会えないのかな?
でも、ママが最後に呟いた言葉。
「ダイアモンド・ダストみてえ…キレイだ…」
初めてこの力をキレイって言われたの。
だから私はずっと忘れない様に、覚えておくの。
私の名前はクーラ・ダイアモンド。
友達の名前はキャンディ・ダイアモンド。
どっちも大切な言葉。
それが私たちの名前。
私はこの名前が、大好き。

 

 

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