12月12日の花:ポインセチア(マーブル)=祝福する
京、メロ、ホキ/99




夕食が豪勢だ。
そう思ったのは京大だけではなかったらしい。
「何か今日の夕飯、豪華じゃねえ?」
隣りの椅子に腰掛けた京也もテーブルの上に並んだそれらを眺めて目を丸くしている。
野菜と豆がたっぷりのミネストローネ、香草のソースがかかったローストビーフ、スライスして軽く炙ったフランスパン、白身魚とシメジのグリル焼き、魚介類の和風マリネ、削りチーズをたっぷり振り掛けたサラダ。
今日はクリスマスだっただろうかと思わずカレンダーへと視線を向けるが、どう考えてもクリスマスはまだまだ先だ。
「あ」
そこでやっと思い至った。
「京の誕生日か」
「ああ!」
隣りで京也が手を打った。
「だから豪勢なんだな」
するとミネラルウォーターの満たされたグラスを手に京が「残念」と笑った。
「半分正解、半分ハズレ」
ことりとそれぞれにグラスを置きながら彼はにやにやと笑う。
「半分?」
他にも何かあっただろうか、と二人が顔を見合わせると、「バーカ」と京に一発ずつデコピンを食らった。
「イタッ」
「何すんだよ!」
「今日は俺と、みづきと、お前らの誕生日だっつーの」
「「…俺たちの?」」
「そう。ケーキもあるから心して食いやがれ」
そう笑って庵の隣りに座る京を二人はじっと見詰める。
自分達はクローンで、彼はオリジナルで。
彼自身が望んで生み出された存在ではなくて。
きっと憎まれている。蔑まれている。そう思っていた。
あの時、出会う前までは。
彼は気にするなと笑ってくれたけれど、罪悪感は付いてまわった。
生まれてきて、ごめんなさい。
何度そう思った事だろう。謝ろうとしただろう。
けれど、ああ…。
「京大、京也、みづき、そして俺!誕生日おめでとう!」
赦してくれて、ありがとう。

 

 

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