12月24日の花:クリスマスホーリー=あなたを守る、永遠の輝き
京/97




彼がオロチの首を締め上げ、その青い炎が猛り狂うように舞った。
そこへ駆ける僅かな距離。
神楽の悲鳴の様な制止の声が背中にぶつかる。
けれど自分は彼の名を呼び、拳を振りかざす。
青の中に、赤が生まれる。
それが青の炎を飲み込み、天を焼く直前。
彼と、視線がぶつかった。

なあ庵、こんな終わり方も…悪くねえよな?



いつから自分はここに居るのだろう。
この真っ暗闇の中に。
遠い昔の景色が消えてからすぐの様な気もするし、何年も経ったような気もする。
体が動かない。
否、体があるのかどうかも分からない。
全てが曖昧で、辛うじて意識がここにある、というだけで。
この闇は、何処まで続くのだろう。
ウフフ……アハハハ……
何処からか笑い声が聞こえてきた。
聞き覚えのある二つの声。
誰だ?誰かいるのか?
暗闇の中、問い掛けた。と思う。
あら坊や、迷子なの?
二十歳を過ぎて迷子とは。さすがあの男の息子だな。
微かにからかうような色の混じった、艶のある声。
……ねーさん?
こっちよ、坊や……見失うんじゃないよ、京…
さあ、こっちにいらっしゃい…
遠ざかる声。
待てよ!ねえさん!なんでっ…
慌ててその二つの声を追いかけた。と思う。
けれどすぐにその気配は消えてしまう。
マチュア!バイス!!
やはり気配はない。
けれど、そのかわりに新たな気配。
ふわりと風が頬を撫でた。ような気がした。
さあ、こちらです…
その懐かしい声に体が震えた。と思う。
まさか…
すっとその腕が上がり、闇の一転を指差した。と確信を持って感じる。
お行きなさい。あの光の先へ…
光?
改めてその指の先を見ると、確かに微かな光点が一つ、闇の中に浮かんでいる。
そこに、「彼」が待っています…
ふと掻き消えた気配に京は辺りを見渡した。のだと思う。
ゲーニッツ!!
応えがなければ気配もなく。
その光点へと向かうしかない。
徐々に大きくなっていく光。
京がそこへ近付いているのか、光点がこちらへ向かって来ているのか。
それとも、光がひたすら拡大しているだけなのか。
判断が付かぬまま、やがて光に包まれ、京は全てを手放した。
最後の瞬間、声を聞いた気がした。

 

 

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