12月28日の花:キズイセン=私のもとへ帰って
京/98




ゲーニッツの示した光が全てを包み込み、どれくらい後だろう。
相変わらず京は光の中に居た。
けれど先程の様な眩しさはなく、ぼんやりとした明るさだ。
何だろう。
何か、いる。
そこへ手を伸ばそうとすると、何かが阻んだ。
壁の様なもの。
邪魔だ。
そう思うと見えないそれはどろりと解け、京の行く手を阻むものはなくなった。
ゆっくりとそこへと向かう。
ああ、あれは。
京は自然と笑みが浮かべた。
あれは、俺の欠片だ。
それは途方に暮れて泣いている。
本来あるべき場所から引き離され、帰りたいと泣いている。
何だよ、迷子になったのか?
駄目だろ、勝手にどっか行ったら。
京の伸ばした手がそれを包み込むと、それは嬉しそうに笑った。
ほら、もう大丈夫。
俺の中に、戻っておいで。
引き寄せようとしたその瞬間、京の意識は突然遠ざかった。
何、と思うと同時に手にした筈のそれが消えてしまったのが分かる。
それが、無性に悲しかった。

 

 

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