ぷり子さんへお誕生日おめでとうSSSですv

ベゴニア
花言葉「片思い」




寝坊した、と自覚した瞬間の反応は、大きく分けて二つある。
慌てふためくか、または呆然と硬直するか。
「………」
その日の京の反応は、後者だった。
「……十、時…?」
手の中の目覚し時計を呆然と見詰める。
何度見ようと凝視しようと針が示すのは十時五分。
ばっと傍らを見ると、既にそこで寝ていた筈の夫の姿はない。
しまった、と京は枕に突っ伏す。
彼が起きて支度をし、出ていく物音にも全く気付かなかったとは。
朝飯を作る事はおろか、お見送りすら出来なかった。
「あ〜……」
京は内心でマキシマに謝罪しつつずり落ちた蒲団を持ち上げ、
「あ?」
寝起きの為いつも以上に低い声でそれを見下ろした。
見遣った方とは逆の傍らに敷かれた蒲団が盛り上がっている。
つまり、「中身」がいる。
「コラ」
腕を伸ばし、べろっと蒲団を捲ると案の定。
「……」
蒲団の繭の中で丸まって寝こけている義弟。
「オイ、仕事はどうしたよ」
反応無し。
「…ケーイダーッシュ!」
もぞもぞと蒲団ごと隣りの蒲団へと移動してその鼻を抓む。
「……」
待つこと数秒。
「…〜〜〜?!」
ぱっと手を放す。
「おい、てめえ仕事はどうしたんだよ」
「??…やすみ」
寝ぼけ眼でそう答える義弟。
そういえば昨日、酒飲み話ついでにそんなような事を言っていたような気がする。
「なんだよ驚かすんじゃねーよバカ」
自分勝手なことを言いつつ京はそのまま二度寝の体勢に入る。
殆ど意識が寝ているK’もすぐにそのまま二度寝に突入してしまい、室内の音は微かな寝息だけとなった。



「……」
K’は何かに閉じ込められているような感触に目を覚ました。
「…?」
未だ夢現の状態でK’はその温もりの中で重い瞼を薄らと開ける。
「………」
そして目の前の光景に沈黙。
「……?!」
漸くそれを理解したK’の体は一気に硬直した。
かーっと顔に血が上っていくのを感じる。
京がK’の上半身を抱きかかえる様にして眠っているのだ。
「く、くくく草薙?」
妙にひっくり返った声をかけても反応はない。
「おい、草薙!」
自分を抱きしめる腕の感触を自分から解く事が出来ないK’は腕を伸ばして京の肩を揺さぶる。
「……んー?」
漸くもぞもぞと目の前の体が動き出し、頭上から眠たそうな京の声が降ってくる。
「…なんだよ」
微かに掠れた声がK’の耳を擽る。
「う、腕…」
「だからなんだよ」
「その…」
離してくれ、と言うべきなのだが、本音としては離して欲しくないK’はもごもごと言い澱む。
するとそれを不快と受け取った京が「ああ?」と一層低い声を洩らす。
「ごちゃごちゃうっせえ、俺は眠ぃんだからてめえも寝てろ」
随分自分勝手な言い分を残し、京は再び寝る体勢に入ってしまう。
「っ…!」
しっかりK’を抱き枕にして。
しかも今度は脚までK’の腰に巻きついている。
「………」
結局K’は嬉しいやら後ろめたいやら複雑な心境を抱え、抱き枕に徹することにした。
どうせ、自分はこの男には適わないのだから。
惚れた方が負け、とはよく言ったものだ。
K’はそんな事を思いながら三度寝に突入した。

 

+−+◇+−+
ということでぷり子さんお誕生日おめでとうございますvv
マキシマ京を練り込みたかったのですが、結局名前しか出てきませんでした。(爆)
リクエストも聞かずに書いたので「こんなん要らんわー!」と言われそうです。(笑)
相変わらず花言葉に添ってない粗品ですが、受け取って頂ければ幸いですv

 

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