ガラスの空の下で




手塚へ



こうやって手塚に手紙を出すのって、初めてだね。正直、何だか照れくさい。
彼女が言った通り、君は俺を許してくれた。本当に有り難う。
実は、貰って欲しい物があるんだ。
彼女がね、君にセーターを編んだんだ。編物、趣味なんだよ。
俺や国治のは編んでしまったから、手塚のも編みたいって訊かなくてね。
彼女がね、俺と違って毛糸が少なく済むって笑っていたよ。手塚、細いから。
暇な時にでも取りに来てよ。鍵は開けておくから。
この手紙が届く頃には、俺たちはこの街から出ていると思う。
行先は教えられない。
御免ね。俺はもう手塚に逢う事は出来ない。
一人の女性と、子供の命を俺は消してしまった。
確かにあれは事故だった。例え俺が手塚に全てを話していたとしても彼女は事故に遭ってしまったのかもしれない。
けれど、俺はどうしても自分の所為じゃあ無いとは割り切れない。
もし、なんて事を考えても仕方ないと分かっているけれど、それでも罪悪感を消すことなんて出来ない。
このまま手塚と一緒にいることは、どうしても出来ないんだ。
……
ああ、そうだ。話が前後して悪いんだけど、セーター、リビングに置いてあるから貰ってくれると有り難い。
俺が持ってても、仕方ないから。
色はね、俺が選んだんだ。手塚には、白が似合うと思って。
ねえ、手塚……。ああどうしよう。何を書こうとしていたか、分からなくなってしまった。
書かなきゃと思っていた事がたくさんあるんだ。なのに、駄目なんだ。
愛してる。
……ごめんね。
これだけしか、浮かばないんだ。
愛してる。愛してる手塚。
ごめんね。
きっと君はずっと俺を想っていてくれるだろう。
忘れること無く、追うことも無く、ただ俺を想ってくれるだろう。
ごめんね、苦しめて。
けれど、どうしても、忘れて欲しくないんだ。
手塚が苦しむって分かってる。手塚は優しいから、俺との記憶に泣くかもしれない。
そんなこと無いって君は怒るかもしれないけれど。
ごめんね。
本当は、泣いてくれたらって思ってる。
泣いて泣いて、俺を愛していると叫んでくれたらって思ってる。
酷い男でごめんね。
もう逢う事は無いと思うけど、ずっと愛してるよ。
優しい想いを有り難う。
愛してる。手塚国光と言う存在の全てを。
ごめんね。


乾貞治

*―*◇*―*
ハイ、「小さなガラスの空」にあった乾さんからの手紙の全文です。
この乾氏は手塚の元を去ってますが、手塚の心は手放す積り全くナッシング。ひでえヤロウだ。(爆)
ちなみに、更にン年後の話もあるんですが、考えてるだけ。短いからまあいいか、と。
でも国治君の中学生姿を書いてみたいという思いもあるのでストーリーが纏まったら書こうかな、とも思ってるんですが…どうでしょう?このまま終わっておきますかい?(誰に聞いてるんだよ)
あーリョ受けで書きたいのもあるし、あれもこれもあーーー…やれやれ。(爆)
(2001/12/10/高槻桂)

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