翌日が休日だったのは幸いだったのか不幸だったのか。
二人は繋がる事のできなかった時間を埋めるかのように抱き合った。 繋がった場所からは精液が溢れ、卑猥な音を立てた。 何度も最奥に精を放ち、疲れ果てては四肢を絡めて泥のように眠った。 そしてまた目が覚めては求め合う、それの繰り返しだった。 食事も摂らず、朝も夜も無く繰り返される情交。 シーツは二人の汗と体液に塗れ、ぐしゃぐしゃだった。 幾度目かの目覚めに、成歩堂は覚醒しきらぬ意識でベッドを探った。 今まで腕の中に居た妹が居ない。 締め切ったままのカーテンを開くと青白い光が室内を満たした。 時計を見れば、早朝の七時過ぎ。 日付を見ると、あれから丸一日過ぎていた。 床に脱ぎ散らかしたはずの二人分のパジャマも消えている。 部屋の外からは味噌汁の匂いがして、不意に腹が鳴った。 そういえば昨日一日何も食べていない事に思い至って頭を掻いた。 部屋着のズボンだけを履いて簡易キッチンを覗くと、妹がお玉で味噌汁をかき混ぜている所だった。 「あ、お兄ちゃんおはよう」 「あ、お、おはよう…」 何事も無かったかのような妹の笑顔に成歩堂はどもりながらも挨拶を返す。 すると妹はそんな兄を見てぷっと笑った。 「やだ、お兄ちゃん、髪ぼさぼさ。シャワー浴びてきたら?」 「え、あ、うん…」 言われるがままに浴室に向かい、ズボンを洗濯機の中に放り込もうとしてぎくりとする。 ドラムの中には先客が居た。自分と、妹のパジャマと下着だ。 脳裏に昨日の痴態が甦る。 耳に残っている妹の嬌声。 自分を呼ぶ甘えた声。 ぬめる秘部の熱さ。 自身を咥え込む肉の締め付けと柔らかさ。 「お兄ちゃん?」 「!」 ひょこっと浴室を覗き込んできた妹の声にはっとする。 「どうしたの?そんなところでぼーっとして…」 その視線が下がり、ああ、と納得したように妹は笑った。 その笑みにぎくりとする。 先ほどまでの、明るい笑顔ではない。 艶やかな、女の笑みだ。 「思い出してたの?」 するり、と音も無く浴室に滑り込んでくると妹は成歩堂に身を寄せた。 先ほどまではお玉を回していた手が下肢を滑る。 「ココ、おっきくなってる…」 「ぅあ…」 やんわりと握られた自身に成歩堂は声を上げる。 柔らかく上下する手指に短く息を吐く。 「いいんだよ、お兄ちゃん…して?」 耳元で囁く甘い声。 ちゅ、と唇を啄ばまれた途端、何かが吹っ切れる。 されるがままだった成歩堂の手が妹のシャツの中にもぐりこみ、下着をずり上げると零れた乳房を揉みしだく。 もう片方の手は彼女の履いていたハーフパンツを下ろし、既に熱くぬめり始めているそこへと指を滑らせた。 結局、脱衣所で一回、二人でシャワーを浴びながらもう一回セックスをした。 背徳心と脱力感を伴って食卓につく頃には、妹は先ほどのことが嘘のようにいつもどおりだった。 朝食を済ませ、スーツに着替える背後で妹が何か白い大きなものを抱えてぱたぱたと脱衣所へと向かうのがチラリと見えた。 恐らくあの情事で汚れきったシーツだろう。 ネクタイを締める頃には洗濯機が動き出す音が聞こえてきた。 玄関へ向かう成歩堂の後を彼の鞄を持った妹が付いて来る。 靴べらを使って靴を履き、はい、と差し出された鞄を受け取って成歩堂は妹を見下ろした。 「ちゃんは今日は学校は?」 いつもなら自分より早く家を出るはずの妹はのんびりとした面持ちで兄を見上げている。 「今日はお休みするね」 にこりと笑ってそう告げる妹に、どうして、と問う勇気は成歩堂には無かった。 「いってらっしゃい」 「うん、いってきます」 そうして妹に見送られてアパートを出る。 通い馴れた道。 見慣れた風景。 背後を振り返れば、今でも妹が見送ってそうで振り向けなかった。 次第に目的のビルが見えてくる。 階段を上がり、ポケットから鍵を出す。 成歩堂法律事務所。 そう書かれた扉をくぐり、扉を閉める。 「……っ……」 そしてそのままその場で崩れ落ちた。 扉に凭れ掛かって膝を抱える。 「…っく…ぁ…」 涙が溢れた。 「…ぁ…あ…」 申し訳なかった。 妹に申し訳なかった。 御剣に申し訳なかった。 父に、母に申し訳なかった。 全ての人に、申し訳なかった。 何より、自分自身に申し訳なかった。 「ごめんね…」 結局の所、自分自身が苦しむのが嫌だと思う自分が、嫌だった。 *** 多分次から漸くみったん出てくる。 |