「あと…5分だけ」
(成歩堂/逆転裁判夢)




チャラッチャ〜ラチャ〜チャラチャチャ〜♪

「…む…?」
眠りを妨げる電子音に、私は布団の中から手だけをにゅっと出してそれを引っつかんだ。
ピッと手探りで通話ボタンを押しながらもそれを布団の中に引きずり込む。
「…もしもし?……あれ、なんであんたがあたしのケー番知ってんの…?……あれ?ほんとだ、これお兄ちゃんのじゃん…ごめん、寝惚けてた…んー、いるよ、おんなじベッドに」
電話の向こうの相手が固まったのを機に私はもそもそと布団から顔を出す。
目の前に現れた兄のドアップ。あ、ちょっと隈できてる。最近忙しそうだったしなあ。
そんな事を思いながらその頬を指先でちょいちょいと突いて目覚めを促してみる。
「お兄ちゃん、おーきーて」
むにむにやっていると「うーん、あと五分…」と呟いて目も開けない。
「起きないと狼が襲っちゃうぞーがおー」
むにーんと頬の肉を引っ張ってみると、さすがに伸びた顔が顰められた。
「うひゃっ」
途端、全身が拘束され、私はじたばたともがいてみる。が、本気で足掻いているわけではないので無駄な抵抗に終わった。
「うーん…狼捕獲成功…」
完璧寝惚けている兄の頬をぺちぺちと叩き、電話だよ、と告げる。
「ん…?でんわ…?」
そこで漸く意識が浮上してきたのか、薄らと瞼が上がった。
「うん、御剣検事から」
「!」
途端、兄ががばっと起き上がったので、危うく私はベッドから転がり落ちる所だった。
「はい、電話」
それでも何とか携帯電話を手渡すと、兄は慌てて電話に出ていた。
「み、御剣?!どうしたんだこんな朝早く…え?いや、それは昔からの癖で、いや、だからそうじゃなくて、あ、ちょ、みつっ…切られた」
呆然と携帯電話を見下ろしている兄。
「えー?何か用事があったからかけてきたんじゃないの?」
「その筈なんだけど…しまった…」
私は何が「しまった」なのかさっぱりわかりませーんという顔で兄を見上げていた。
勿論嘘なのだが。
「電話終わったならもっぺん寝よ?それとも起きる?」
折角の休日なのだし、と続ければ、兄は暫くの間携帯電話を見下ろして唸っていたが、私がそれをひょいと取り上げ、ベッドサイドに戻してしまうと漸く踏ん切りがついたのか、寝る、と呟いてばたりと倒れた。
「じゃああたしも寝るー」
真似をしてぱたんと倒れると、兄の腕が私の身体を引き寄せた。
「あーどうしたもんかねえ…」
参った、と呟く兄の胸元に顔をすり寄せ、私はくつくつと笑った。




***
スキンシップ過剰兄妹。
理由は一応ちゃんとありますが書くのはいつになることやら。(爆)

 

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