バレンタインデー 今日はバレンタインデー。 朝からカードを渡す浮き足立った生徒達で溢れている。それは放課後になっても変わらない。 そんな中、カードと一緒にセロファンとリボンでラッピングされたチョコマフィンの包みを渡す母子の姿。 「はい、これがフレッドとジョージの分ね」 「「有り難う存じます」」 二人はまるで宝物を賜る従者の様に片膝を着いてそれを受け取った。 「ハリーたちが何処に居るか知らないかしら?」 「「我らがハリーとロニー坊やはミズ・グレンジャーと共に大広間に居ましたぞ」」 「そう?ありがとう」 「フレッド、ジョージ、バイバイ!」 予め打ち合わせをしていたかのようなユニゾンには礼を告げ、リリと共に大広間へと向かった。 夕食の時間が近い事も有り、大広間には多くの生徒が集まっていた。 「あら、ジェム」 その中で、グリフィンドールのテーブルには双子の言った通りハリーたちが居た。そしてその隣りにはの息子であるスリザリン生、ジェムの姿まである。 「ドラコは一緒じゃないの?」 「パーキンソンから逃げ回ってる」 ジェムの苦笑混じりの応えに「あら大変ね」とは笑った。 「はい、これはジェムの分。みんなにも」 「リリもね、てつだったんだよ!」 兄であるジェムではなく、ハリーに向かって嬉々として報告する妹の姿にジェムは苦笑する。 「リリは本当にハリーが好きだね」 「うん!リリ、ハリーだいすきだよ!」 「じゃあ、リリはパパとハリー、どっちが好き?」 ジェムの何気ない発言にハリーが青くなった。 (なんて事を聞くんだ!) ここで父だと答えてくれればセーフ。だがもし、万が一にも自分だと言われたら。 (何かすっごい視線を感じますー!!) いつからそこに居たかは知らないが、背に突き刺さる憎しみの篭もった視線。 己の背後に誰が居るかを当てる事など「アロホモ〜ラ」を正しい発音で唱えるより簡単だ。 「ママがいちばんすき」 にへら、と気の抜けきった顔で笑うリリに、ジェムは「いや、それは知ってるけどそうじゃなくてね」と食い下がった。 「ママの次に誰が好き?」 ハリーが「余計な事を!」と言わんばかりの目でジェムを見たが、生憎ジェムの視線は妹に注がれていてそれに気付く事はなかった。 「ハリーとパパ!」 その瞬間、誰もが思った。 ああ、イイ歳した男が本気でショック受けてるよ。 「何故…何故だリリ…何故我輩とポッター如きが同列なのだ…しかもポッターを先に呼ぶなど…!」 「そんな細かい事まで気にする方が可笑しいんじゃないの」 呆れ果ててつい口を付いて出た呟きを、大人げ無い男が聞き逃すはずも無く。 「何だとポッター!聞き捨てならんぞ!!」 「ええ、ええ!何度でも言ってやりますよ!どっちが先に来る呼ばれるかなんてどうだって良いって言ってるんです!それに僕の方が好きって言われたわけじゃないんですから一々突っかかって来ないで下さい!!」 「貴様の方が上であるなど以ての外だ!!第一、一括りにされるという事は「父とあの規則破りで有名なハリー・ポッターは同レベルです」と言われたも同然なのだぞ!!」 「ああそりゃあ迷惑な話しですね!僕があなたみたいな人と一緒にされるなんて!!」 「それはこちらのセリフだ!」 「母さん、リリ、あっちで食べよう」 白熱していく口論を尻目に、ジェムはリリの手を引いてスリザリン席へと向かう。 「もしかして、一緒に食べたかったの?」 の問いかけに、ジェムは素直に頷いた。 「だっていつも三人で食べてるじゃないか。僕だって偶には一緒に食べたいよ」 「お父さんは良いの?」 「うん」 即答。 「最近母さんとリリの事ばかり構ってるから、今日は仲間外れにしてやろうと思って。ハリーには悪いけど犠牲になってもらった。ほらリリ、あそこにドラコが居るよ」 くすくすと笑うを余所に、ジェムは漸く大広間に姿を現わしたドラコを指差した。(どうやら逃げ切ったらしい) 「あー、ドラコだぁ!」 「リリ、ドラコにこれを渡してくれるかしら?」 そう母に手渡されたのは、カードとラッピングされたチョコマフィン。 「うん!」 リリはそれを受け取ると、ドラコの元へと駆けていった。 (END) +−+◇+−+ あー…ネタ切れの色が滲んだ作品となりました。(苦笑) 最初はカードだけだったんですが、ヒロインが半分日本人だという事を思い出したのでチョコも絡めてみました。 チョコといえば、他サイトさんのSSとかでふくろうにチョコあげてるシーンが有るんですが、初めて見た時ぎょっとしました。更にはそういうシーンを書いている人が結構居る事にこれまた驚きました。 つい「お前ら動物飼った事ないだろ」とツッコミを入れてしまいました。 チョコレートは動物に食べさててはならない食品の代表とも言える食品です。中毒起こしますよ。 せめてピンクマウス(冷凍ネズミ、小)とかにしてやれ、とか思いました。 関連タイトル:「気の合わないひと」、「自慢の…」、「伝説」 (2003/07/20/高槻桂) |