自慢の・・・ その日の朝、ハリーとロンがいつもの様に連れ立って大広間に行くと、やはりいつものようにハーマイオニーが分厚い本を読みながら二人を待っていた。 そしていつもの様に挨拶を交わし、それぞれトーストなりクロワッサンなりを手に昼までのエネルギー補給に努めていた。 「ハリー!」 このホグワーツで誰より幼い少女の声が響き、三人は出入り口へと視線を向ける。 そこには母親の手を離れてこちらに駆け寄ってくる少女、リリ・スネイプの姿があった。 「おはよう、リリ」 ハリーが笑いかけると、リリは「あのね、あのね、」と手でハリーに身を屈めるように示す。 「何?」 何か内緒話でもあるのだろうかと身を屈めると、頬にちゅ、と柔らかな感触が当たった。 「おはよ、ハリー」 ぽかんとしてリリを見ると、少女は「あのね、朝のあいさつなの。パパとママがいつもリリにやってくれゆの」と得意げに言う。 「へ、へえ…そうなんだ…」 微笑ましいはずなのに、何故かどこからとも無く冷気が漂って来る気がするのは気のせいであって欲しい。 「ロンもおはよう!」 「えっ!」 ロンは一瞬遠慮しようとしたが、子供の申し出を断ると機嫌を損ねるだけならまだしも、下手をすると泣き出しかねない。 万が一にもリリを泣かせてしまうような事があれば、気のせいであって欲しい冷気の出所である人物に殺されるかもしれない。いや、確実に殺られる。 「…ハイ…アリガトウゴザイマス…」 ロンは内心で涙を流しながら少女の朝の挨拶を受け入れる。 「ハーマイオニーも!」 「はい、おはよう」 ハーマイオニーは馴れたもので、というより彼女がリリと同性である所為か、彼女は冷気の出所を気にする事無くそれを受け入れ、あまつさえリリの頬にキスを返す事まで出来るのだ。 「ポッタァァァァァ…」 地に這うような低音が己の姓を呼び、ハリーは勘弁してくれ、と項垂れた。 「〜〜っまたですか!」 いい加減にしろ!とハリーは内心で叫びながら勢いよく立ち上り、人を射殺せそうな視線をした魔法薬学教授を睨み挙げた。 「よく見て下さいよ!ロンにもハーマイオニーにもしてるじゃないですか!現に今はフレッドとジョージにやってるのにどうして僕だけなんですか!」 「ええい黙れ!先日に引き続き我が娘を誑かし、あまつさえ唇を奪うとは万死に値する!」 「人聞きの悪い事言わないで下さい!いつ僕がリリにキスしました!?寧ろ僕がされたんです!ていうか頬ですよ頬!!」 「貴様!抜けぬけと此度もリリに責があるとでも言いたいのか!貴様は婦女子をレイプしておいて「向こうが誘ったのだ」と言い訳をする輩か!!おお恐ろしい!!」 「人を強姦魔みたいな言い方しないで下さい!!!だから人の話を聞いて下さいって言ってるでしょう?!朝!おはようってあいさつをした!頬に!!ただそれだけの話でしょうが!!アンタだって毎日してるだろうが!」 「親が娘にするのは当たり前の事だ!第一何だ貴様!教師に向かってその口の利き方は!」 「散々親バカ丸出しにしておきながら今さら教師とか抜かさないで下さい!!威厳もへったくれもあったもんじゃない!」 「マァマ、パパとハリー、またケンカしてゆよ?」 「放っておけば良いのよ。あれがパパとハリーのスキンシップなんだから。さ、リリはママと朝食のお時間ですよ〜」 大広間中に響く声で怒鳴り合っている二人を指差すリリの背を押し、はさっさと教員席へと向かう。 「止めた方が良いですか?」 マクゴナガルと目が合ったが笑いながら問うと、彼女は一つ溜息を吐いた。 「放っておきましょう」 関わるのもバカらしい、といった表情だ。隣りのダンブルドアもにこにこと「おはよう、リリ」と笑いかけている。 「おじいちゃん、おはよう!おばあちゃんもおはよう!」 リリはさすがにテーブルという障壁が有る為にキスはしなかったが、そのテーブルに手を掛けてにこっと笑うその姿にマクゴナガルも苦笑混じりに笑った。 「ええ、おはよう、リリ」 (終) +−+◇+−+ 大広間バトル、再び勃発。そして思いもよらずマクゴナガル先生でオチ。 こなおがどうしてもハリーとリリをくっ付けたいらしく、メールで話している時に沸いた話。 取り敢えず、普通は実際に食事中にこんな事されたら回りは迷惑千万ですよね。私は指差して笑ってそうですが。(爆)人間て奴ァ、順応していく生物なんですよ。(遠い目) リリはダンブルドアとマクゴナガルをおじいちゃんとおばあちゃんだと思ってます。というか、ホグワーツを一つの家族だと思ってる節があります。まあ、小さい子だから。 今回は自慢の娘、自慢の家族などの意味合いで。ていうか一々説明しないといけないのが虚しい。 関連タイトル:「気の合わない人」、「バレンタインデー」、「伝説」 (2003/07/07/高槻桂) |