純血主義 「ルース、純血だとか血筋とか、そんなんじゃないんだ」 人は裏切るものなのだ。 そう繰り返す父の姿を忘れたわけではない。 けれど、私はお前は違うと思い込んでいた。 他の誰がそうであろうと、お前だけは違うのだと。 私たちはその血筋を遺す為に結婚する。 それが私たち純血として生まれた者の義務であるのだから。 けれど私たちに何も変わりはない。そう信じていた。 不変のものなど無いと知っていたはずなのに、例外を信じてしまった。 「モリーと結婚するのは俺が彼女を愛してるからだ」 父の言葉が何度も頭の中で繰り返す。 いいや、やはりお前は違う。 お前は、私を裏切ってなどいない。 「ルース、どうしてお前はそう純血に拘る?マグルだって同じ人間だ。何をそんなに嫌悪する」 私が愚かだったのだ。 言葉などという陳腐なものにしなくとも伝わっているのだと信じていた私が。 そう、彼にとっては何も始まっていなかったのだ。 「もう、それしか道はないのか?」 私が一人で浮かれていただけの話だ。 私はお前に大切にされていた。 その意味を勘違いした。 ただそれだけの事。 「…なら、ここが分かれ道だ」 別れ道、そう聞えた。 確かに別れ道だ。 握り続けていくのだと思っていたお前の手を、今ここで離す。 今後、衝突する事はあっても、二度とこの手を握る事はないだろう。 私が私で在り続けるように、お前もお前で在り続けるだろうから。 「じゃあ、な…ルシウス」 踵を返し、去っていく。 私はただその背中を見ていた。 ――なあ、ルース… ルース。 彼にそう呼ばれる事が心地よいものだったのだと気付いたのは、「ルシウス」と固い声で呼ばれた瞬間だった。 だが、気付いたとて何も変らない。 私と彼の道は違えたのだから。 そう、永遠に。 「さようなら、ウィーズリー先輩」 私は敢えて氏を呼び、彼の去った道とは逆の道を歩き始めた。 (END) +−+◇+−+ なんつーかこう、薄靄の中のような話というか、不明瞭というか、明確な事を殆ど書かない話が書きたくなって書いた話。 ていうかマイナーでスミマセン。今までこなおにすら(モリーが居るからダメ!とか言われそうだったので)言った事無かったと思うのですが、凄い好きなんです、アーサー×ルシウス。実を言うとスネハリ、ムーハリの次に好きと言っても過言ではないくらい。 私の設定では、ハリーが一年の時にルシウスが37歳、アーサーが41歳という設定です。 もう勢いに任せて今まで溜めて来たアールシネタを書いていこうかと。(爆) あ、因みにスネイプの妻ヒロインでの二人とこの話の二人とは別物です。 (2003/07/14/高槻桂) |