美人




その日、夜中の空き教室でドラコと二人だけのお茶会を開いた。
とはいっても、本格的なお茶のセットを魔法で呼び出せるはずもない。
僕らのお茶会は、持ち運びのきくポットと、マグカップ二つを持参する質素なものだった。
席は決まって向き合う形になる。
彼曰く、僕の顔が見たいそうだ。
まったくかわいいことを言ってくれる。
今日も位置は変らず、僕と彼は向かい合いながらカップを手にする。
彼は優雅な動作で、お茶を飲む。
その一つ一つを、見ているのが僕は好きだった。
いつもならその動作を何気なく見るだけなのだが、今日は彼の容姿に目がむいた。
それを見ていたら、つい思ったことを口にだしたくなって、考えるより早く僕は口にだしていた。

「ドラコってさ、美人だよね」

「は?」
何?と言わんばかりに見返される。
「いやだから、君が美人だっていっているんだけど」
「それは聞こえた。何を突然言い出すんだ」
企みがあるように思えたのだろうか。
あらかさまに彼は顔をしかめた。
「今そう思ったから、言ったまでだけど」
「男にいう台詞じゃないだろう」
「僕は僕の恋人に言ったつもりだよ。それならおかしくないだろう?」
にっこりと笑って見せると、彼は少しだけ頬を赤くして視線を逸らした。
嬉しがっているのだろう。
僕はそんな彼をじっと見つめる。
プラチナブロンドの髪。
薄い青の瞳。
整った目鼻立ち。
その青白い顔が、今の僕には儚いものに思えて。
さらには、全てのものを、火を灯さない教室に差し込む月明かりが、より一層美しく見せる。
これを美人と言わずになんと言えばいいのか。
きっと他の人も、そう思うだろう。


ふと、あらぬ方向へと考えがいく。
僕のように彼を恋しく思うものもでてくるだろうかと。
不思議なもので、思い始めてしまうとそれしか頭の中に浮かばなくなっていた。
もしも。
そんな事が次々とでてくる。
不安になったんだ。
「どうしよう、ドラコ」
「何が?」
「僕、なんだか不安だ」
「だから何がどうしたんだ?」
少し怒りを含んだ言葉に、僕は真面目な顔で答えた。
「君があんまりにも美人だから、誰がドラコを好きになって、その人に獲られてしまうんじゃないかと思って」
「…君は馬鹿か?いや、恐ろしく鈍いだけか?」
大きくため息をつかれた。
彼の言葉に僕はむっとしていい返す。
「君に言われたくない」
彼は返事をするわけでもなく、わからないのかとでも言いたそうに、ただやれやれと首を振った。
「例え誰かが僕に好意を示してきたとしても、僕は君以外の誰にもついていかないということを、他でもない君が一番理解していると思ったんだけどな」
「そんな事、かけらも言ってくれてないじゃないか」
「言わなくても解るだろう。必死の思いをして、君とこう言う関係になる切欠を作ったのは誰だった?」
「…ドラコだよ」
「だろう。それに、君は僕を手放す気でいるのかい?」
「そんな事ある訳ないじゃないか!…じゃあ、僕はもっと自分を買いかぶって良いってこと?」
君に誰よりも愛されていると、思って良いということ?
無言の訴えは、確かに彼に届いたようだ。
「そうだよ。じゃないと僕も自信がもてなくなるだろう」
「君が僕に愛されてるって事に?」
「…」
答えは返ってこなかったけれど、横を向いた彼の耳が赤くなっているのが見えた。
彼流の照れ隠し。
そして僕の言い分が正しいと言うこと。
嬉しかった。
「わかった。えへへ、ありがと」
「その笑い方やめろよ、気持ち悪い」
「はいはい」


綺麗な綺麗な僕の恋人。
僕も君が、一番好きだよ。







あとがき
ドラちゃま普及第四弾☆
今回ちょっとドラちゃまが優勢かと。しかしきっとこの後ハリーの巻き返しがあるでしょう。ええ、私の書くドラハリのハリーは腹黒ですから(にっこり)いくらもがいても、バカップルからはぬけだせなかったです…。
必死に見返して気づいた事。ハリー、名前でてきてませんね(爆)

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