告白 図書館ではとセブルスが並んでレポートを綴っていた。 そこにやって来たのは、ジェームズたち四人。 何をしに来たのかは知らないが、やってくるなりの隣りにそれぞれ座った。 セブルスが何やら文句を洩らしたが、それは含む五人に見事に無視される事となった。 「何書いてるの?宿題?」 ジェームズの言葉には「そんな所よ」と笑う。 一見する限りどちらも薬草学なのだが、もしこのレポートを薬草学教授が見たらこう言うだろう。 「こんな宿題を出した覚えはない」と。 「でもよ、こんなの俺ら習ってねえぞ?」 それに逸早く気付いたのは、シリウスだった。 「あ、本当だ」 一見しただけでは気付かなかったが、よく見てみればそこには知らない薬草も幾つか混じっている。 「企業(?)秘密よ」 彼女は笑ってレポートを巻いてしまう。隣りのセブルスも同じ様に片付けてしまった。 すると、そういえば、と声を上げた者がいる。リーマスだ。 「は卒業したらどうするの?」 セブルスのテキストを揃える手が一瞬止まる。 リーマスの言葉に、は「そりゃあ、」と苦笑した。 「日本へ帰るわ」 ええ!と四人の声が揃って上がった。マダム・ピンスの叱咤の声が飛んでくる。 「こっちで就職するんじゃないの?」 叱咤の声に彼らは声を潜めて彼女に問う。 「父さんがこっちで就職するにしてもしないにしても一度帰っておいでって。今までだって夏休みの度にちゃんと帰ってたのに、こういう時に限って念を押すんだから…私、お見合いさせられるの」 ひょいと肩を竦めた彼女の応えに、「見合い!?」とまた声が上がる。 今度は一人増えて五人分の声だ。 とうとう図書館を追い出された。 「見合いってどういう事だよ!」 シリウスが怒鳴りつつ、彼らは足早に空き教室へ向かう。 「どうもこうも、」 ばたん、と扉が閉じられる音を聞きながら彼女はその辺の椅子を引っ張って腰掛けた。 「私は一族の中で一番力が強いのよ。向こうとしては是が非でも血を残したいんでしょうね」 「何だよそれ!お前はそれで良いのかよ!」 「良いワケ無いじゃない。第一、見合い相手と結婚するつもりがあったらセブルスと乳繰り合ったりしないわよ」 ガタン↑ 「セブルス、座りなさい」 …カタ↓ 「…情けなっ…」 「ていうか、既に尻に敷かれてるよね」 ひそひそと言葉を交わすリーマスとジェームズ。 「それでね、」 はそれすら無視して言葉を続ける。 「見合いは丁・重・に、お断りして家も飛び出してやるわよ。お金を貯めて家を借りるまではルーシーとナルシッサの家にお邪魔させてもらう事にしたの。厚かましいとは思うけど、それしかないもの」 私の人生、私の物。お家の柵なんて知った事じゃないわ。 彼女は何でも無い事の様にけらけらと笑っていた。 その夜、談話室へ向かうとが一人で本を読んでいた。 「」 セブルスの声に彼女は視線を上げ、読んでいた本を閉じる。 「なあに?」 セブルスは彼女の座るソファの傍らに立ち、じっとを見下ろした。 「君が僕を許せるなら……卒業したら、一緒に暮らして欲しい」 何を許すのかと彼女は聞かなかった。 ただじっとセブルスを見上げていた。 やがて彼女は視線を逸らし、手にしている本にその視線を落した。 「もう、決めたのね?私が説得しても、行ってしまうのね?」 彼女が聞かなかった様に、セブルスも何処へ、とは聞かない。 沈黙を肯定と取った彼女は、小さな声で「わかったわ」と囁いた。 「私、貴方に付いて行くわ」 でも、と彼女は続けた。 「一度だけ言わせて……「行かないで」」 視線を伏せたままのその言葉に、セブルスは返す言葉を持たない。 ただ一つ、漸く紡げたのは謝罪の言葉で。 「すまない…」 彼女は「バカね」と哀しげに笑った。 「例えば私がマルフォイの血筋じゃなくて、私もあなたもスリザリンじゃなかったらもっと楽だったかもしれないわ。けれど、事実私はルーシーの従妹で、私もあなたもスリザリンだわ。しかも厄介な事に私たちは(自分で言うのもなんだけど)優秀と来た。こうなるのは、仕様が無い事なのよ。 あなたが私の為に行くのなら、私も付いて行くわ」 でもね、と漸く顔を上げた彼女はいつもの笑みを湛えていて。 「お見合い、ぶち壊しに来てね」 そして漸くセブルスも薄く微笑んだ。 (END) +−+◇+−+ 学生時代の彼を書く事はそれほど辛くないんですが、ハリーの為に奔走している彼を書く事はまだ辛いだろうなあ、と思います。誰とは言いませんが。 ヒロインは学生時代は無鉄砲、現在は腰を据えてドーンと構えてる、そんなイメージです。始めは何も考えてなかったんですが、書いている内に自然とそう言う風になっていたので・・・。 同棲時代は結構情緒不安定です。無鉄砲で勝気なだけじゃいられなくなって来た頃。守られる立場から、守る立場へと変わっていこうとする時期だと思います。 ちなみに冒頭で二人が書いていたレポートは「教師」や「第一印象」で出てくる例の薬の材料の検討書です。この時はまだ机上論で、実際に実験する所までは至ってません。どうでも良いですね、ハイ。 関連タイトル:「食事」、「教師」 (2003/06/24/高槻桂) |