寮生活





最近、頭を悩ます事がある。

週末の朝、少し遅い食事を摂っていた時、大広間でポッターの姿を見つけた。
僕の悩みは決ってここから始まる。
最近の僕は、彼を見たが最後、目がはなせなくなってしまう。
今日もその後ろ姿をじっと見続けてしまっている始末だ。
彼はウィーズリー達となにかを話しているようで、声こそ聞こえてはこないが、笑い会う姿を見れば楽しんでいるのは明らかだった。
胸に不快感が沸き起こる。
だったら見なければいいのにと、自分でも思うが視線を逸らすことができない。
僕は唯々彼を見続ける。
すると彼が振り返った。
その視線の行き着く場所は僕で。
あれだけじっと見つめていれば気づいてもおかしくないのだろうが、今の僕にはそんなことを考えている余裕などなかった。
目に映るのは、無表情の君の顔。
とたんに顔が熱くなる。

「行くぞ!」

気づくと僕は、横でまだ食事をしていたクラッブとゴイルを無理やり引き連れて、足早に広間を出ていた。
「どうしたんだ?」
二人の疑問に答えぬまま、僕は歩調を変えず歩き続ける。
どうしたかって?
そんなの僕が聞きたいさ。



寮に付くと、そこには数人の生徒がそれぞれにくつろいでいた。
空いている黒いソファに身を沈める。
ふうっと大きく息を吐くと、体の熱も引いていった。
ポッターの顔を見ただけなのに。
何故あんなにも動揺してしまうのだろう。
つまりこれが、僕の悩みの種。
答えの出ないということが、さらに僕を悩ませた。
考えれば考えるほど、疑問ばかり浮かぶそれを僕は否定する。
彼のことなどなんとも思っていない。
そう、なんとも思ってなどいないのだ。
しかしそれがまるで自分に言い聞かせているように思えてきてしまった。
僕は馬鹿らしくなって考えることをやめた。


「嘘!?それほんと?」

ぼうっとしていた僕の耳に聞こえてきたのは、女生徒特有の甲高い声。
きゃっきゃと話合う小声でもないその声に、聞きたくなくとも内容は聞こえてきてしまう。
「あんたあんな人が好きなの?」
どうやら恋の話らしい。
「あんな人のどこがいいの?」
「そうよ、どこが好きになったの?」
二人の質問攻めにあう一人の女生徒は、恥ずかしいのかもじもじと話始める。
「どこが・・・って言うのは良くわからないんだ。でも・・・好きって思うの」
どうして、と理由を聞く二人に、あのね、と女生徒は話を続ける。
疑問は僕にも生まれていて、その会話に聞き耳を立て始めていた。

彼女の語ることは、まるで僕の事を言っているかのようだった。

「前は、そんなこともなかったんだけど・・・最近彼を見つけると目が離せなくなるの」

僕もポッターから目がはなせない。

「他の人と楽しそうに話してるのみると、なんか悲しくなるし」

彼がウィーズリーとじゃれあうのを見ると、不快感がうまれる。

「そう!この前彼と目があっちゃって。恥ずかしくなって逃げ出してきちゃったわ」

今日まさに、逃げ出してきた。

「だから思ったの!私きっと、彼に恋しているんだわ」

結論。
僕はポッターに恋をしている。

「そんなことありえない!」

その答えをだした僕自身を叱咤するように、大声をだして立ち上がる。
今考えたことを振り払うように、寮への階段を駆け上がった。
クラッブとゴイルが僕の名を呼んだようだがそれを無視して寝室へはいりドアを勢い良く閉める。
聞かなければよかったかと思った。
けれどどこかで、聞いてよかったとも思った。
何故なら悩みの答えがでたのだから。
彼女の気持ちは、僕の感じた気持ちと瓜二つ。
結論。

ドラコ・マルフォイはハリー・ポッターに恋をしている。

違う、違うと頭を振るう。
しかし否定すればするほど、矛盾がうまれ気持ちが悪い。
その通りだと言ってしまうと、まるで決められた型にはまったかのように、全ての事が理解できるのだ。
認めざる終えなかった。

涙が出た。
恋したことの嬉しさから。
今の彼との関係を考えれば、この思いが叶うことが皆無に等しいという悲しさから。
けれど今は、全てを忘れてしまおうか。
僕に生まれた、この気持ちに祝福を。










あとがき
ドラちゃま普及計画第二弾!
ドラコ恋心自覚話です。スミマセン。ドラコ、思いっきり少女漫画系突っ走ってます。ごめんよ高さん、全力疾走してしまいました(アハ★)ハリー今回喋ってません。かわりにクラッブとゴイルのどちらかが一言話してます。どちらかはご想像にお任せします(爆)

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