嘆きのマートル 「あら」 は目的の場所へ辿り着くなり声を上げた。 「「「あっ…」」」 先客三人の声が重なる。 ハリー、ロン、ハーマイオニーのグリフィンドール三人組だ。 だがここは女子トイレ。(ゴースト付き) ハーマイオニーならともかく、ハリーとロンがいるのはちょっぴり奇妙。 更に奇妙な事に、彼らは小鍋をセットして何やら調合している。 「ええと…見てはいけなかったかしら?」 小首を傾げて問うと、ハリーが「はあ、まあ…」と曖昧に頷いた。 「じゃあ見なかった事にするから、お邪魔しても良いかしら」 返って来たのはまたもや「はあ、」と曖昧な返事で。 は三人に近寄り、彼らの曖昧な態度の理由を知った。 「これ、ポリジュース薬?…ああ、やっぱり貴方たちだったのね」 「『やっぱり』?」 ロンが悲愴な顔つきでを見た。彼女はそれを可笑しそうに「ええ、『やっぱり』」と繰り返した。 「スネイプ先生が「二角獣の角と毒ツルヘビの皮が足りない。確実にポッターどもの仕業だ!」って騒いでたもの」 スネイプの口調を真似てそう言うと、ロンとハリーが心底嫌そうに顔を見合わせた。 「やっぱ、バレてたんだ…」 「でもよく保管庫から盗み出したわね」 感心、と言わんばかりのの言葉に、ハーマイオニーは「怒らないんですか?」と聞いた。 「危険は承知なのよね?第一、ここで私が止めて、材料を没収してもまた作るか別の方法を考えるかするんでしょう?」 の言葉に三人はこっくりと頷く。 「じゃあ私は止めないわ。それに、飲むのは貴方たちだもの。私や家族には関係ないから見逃すわ」 「それって教師として無責任だと思いますけど…」 ハーマイオニーの呟きには笑う。 「言ったでしょう?私が止めても貴方たちは止めない。だったらここからは自己責任って事よ。例えポリジュース薬が失敗しておかしな事になっても、それは自分の責任。それが嫌なら今すぐ止める事ね」 表情は相変わらず微笑みを湛えていたが、どこか突き放したような声音に三人は自分達の行なっている事が本当ならやってはいけない事なのだと心に重く圧し掛かった。 「あらいけない。私ったらここに来た目的を忘れていたわ」 だが、当のは何事も無かったかのように故障中のトイレを覗き込んだ。 「マートル?マートル、そこに居る?」 『…?』 奥からか細い声が聞えてくる。 「ハイ、マートル」 『!』 一瞬にして銀色の少女が現れる。 この女子トイレに住み着いている「嘆きのマートル」だ。 『、聞いて!』 そして彼女はハリーたちが来てからは静かに考え事が出来ない、とさめざめと語り出した。 次第に自分が死んでからの話になり、果てには生前の愚痴まで飛び出す始末。 だがは時折相槌を入れ、ただ聞いていた。 その間にもハーマイオニー達の調合は進んでいき、今日出来る分が終わる頃になって漸く彼女の話は収まりを見せていた。 『だけだわ。変わらず私と遊んでくれるのは』 ロンが洗面台に昇り、その上に鍋を隠す。それを見ていたマートルはまた彼らの愚痴を言い始めた。 「でもね、マートル」 そこで漸くが口を挟んだ。 「もう少しだけ、我慢して欲しいの。ハリーたちもここじゃないと出来ないから」 お願い、と続けるに、マートルは「仕方ないわ」と何処か嬉しそうに言う。 『のお願いなら仕方ないから聞いてあげる。でも、あと少しだけよ』 「ありがとう、マートル」 そしては振り返り、「もう帰るの?」と三人に問い掛けた。 「はい、今日の分はもう終わったので…」 「途中まで私もご一緒させて貰ってもいいかしら」 「はい」 「ありがとう。それじゃあ、またね、マートル」 『また遊んでね、絶対よ?』 拗ねたように言うマートルに、は「ええ、勿論」と笑ってハリーたちと女子トイレを後にした。 「先生ってマートルと仲良いんですか?」 女子トイレを出て暫くしてハリーが問い掛けた。 「そうね、私が学生だった頃からよく話してたわ」 経緯を問おうとしたハリーの言葉はの「あっ」という声に遮られてしまう。 廊下の先でスネイプがこちらを睨んでいる。 「スネイプ先生だわ」 ごめんね、と三人に言い残し、は彼の元へと駆け付けた。 スネイプは厳しい表情のままと何やら言葉を交わしている。時折こちらを伺っている所を見ると、やはりまだ三人を疑っているのだろう。 だが、こちらへ爪先を向けかけたスネイプをが押し留め、半ば強引に角を曲がっていってしまった。 「先生とスネイプが同期って本当みたいね」 「「え?!」」 ハーマイオニーの言葉に二人が驚きの声を上げる。 「同期?!あの二人が?!」 「って事は先生とスネイプが同い年?!」 有り得ない。 二人は揃って首を振り、ハーマイオニーを呆れさせた。 (強制終了) +−+◇+−+ 余りマートルと関係の無い話になってしまいました。まあ、気のせいという事で。 この時はまだ二人が夫婦だとは露見してません。この数日後ぐらいに「驚かせたくって」になるかと。 まあ別にどっちでもいいんですけどね。 取り敢えず、ヒロインのスタンスは基本的に舞台上の傍観者なのでハリーたちの行いも目を瞑っている、という話が書きたかっただけです。 (2003/06/27/高槻桂) |