スリザリン 「・!」 セブルスの次に名を呼ばれ、組み分け帽子の前に進み出たのは黒に近い茶色の髪を持つ少女。 躊躇いなく椅子に座り、その表情は自分が何処になるのか楽しみだ、そう語っていた。 グリフィンドールかレイブンクローだろう。 セブルスは如何にも明るそうな少女を見ながらそう思った。 組み分け帽子と何か話しているのか、彼女は微かに笑った。 そう、冬が明け、漸く春の陽射しを感じた、そんな小さな微笑み。 ああ、あの少女が我々と相容れる事は決してないだろう。 『うむ、では…』 どうやら決まったらしく、組み分け帽子が彼女の頭の上で揺れた。 『スリザリン!!!』 (は?) セブルスは一瞬己の耳を疑った。 それは他の生徒達も同じだったらしく、驚いたような表情をしている。 だが、それも束の間。他のスリザリン生はすぐに我に返り、声を上げて彼女を歓迎した。それはもう名家の子が来たような、はたまた有名人が来たような、そんな騒ぎようだった。 彼女はその歓迎に「これから宜しくお願いします」と笑顔で挨拶を返し、セブルスの斜向かいに腰を下ろした。 どう見ても狡猾さなど欠片もなさそうな、寧ろ庇護欲を掻き立てる、そんな少女。 彼女がスリザリン? あの組み分け帽子は耄碌している。 セブルスは心の底からそう思った。 ・に付いて。 彼女はイギリス人の母と日本人の父(マグルらしい。まあ、自分は純血主義では無いから別に混血であろうが気にはしないが)を持つハーフだという事、十歳までは日本で暮らしていた事、そして蛇をペットにするほど蛇が好きという事。 その程度だ。 そしてやはりスリザリンらしくない。 精々、蛇が好きだと言う所くらいで。(いや、スリザリンだからといって誰しも蛇が好きと言う訳ではないが。寧ろ近付きたくない者が大半だろう) どうにかして彼女がスリザリンに選ばれた理由を探そうとするが、それ以外何も浮かばない。 ああ、いや、もう一つあった。 「ルーシー!」 朝食を摂っていると、件の・の声が聞えた。 ちらりと視線を上げると、思った通り彼女は六学年の青年に駆け寄っている。 ルシウス・マルフォイ。 魔法界では有名な純血一家の子息だ。 「、またネクタイが曲がっている」 彼はの寄れ曲がったネクタイを解き、手慣れた手付きで締め直した。 「いい加減覚えたらどうだ」 ルシウスの言葉に彼女は「手順は覚えているわよ」と唇を微かに尖らせた。 「でもどうしても曲がってしまうのよ。きっとこのネクタイ、私の事が嫌いなんだわ」 彼がスリザリンテーブルに就くと当たり前の様に彼女はその隣りに腰を下ろす。 「それはそれは。お前は先日もそう言って私の物と交換したはずだが?」 確かに彼女の首から胸元へと収まっているそのネクタイはよく見ると真新しい物では無いと分かる。 「ルーシーの意地悪が移ってるのよ、きっと」 「ほう?では明日からは自力でどうにかするのだな」 「ああごめんなさい嘘です嘘」 二人は毎朝そんな言葉を交わしながら朝食の席に就く。 ルシウス・マルフォイは先ほども延べた通り名家の子息で、且つ頭脳明晰、容姿端麗。 その冷徹なる性格から尤もスリザリン生たる生徒としてその座を不動のものとしている。 そんな彼に軽々しく声を掛けるスリザリン生らしくない混血の一年女生徒。普通なら彼を慕う生徒から何かしらの動きがあっても可笑しくないのだが、あの組み分けの儀式の後、談話室で明らかになった彼らの関係から、手出しをしようと企むものは居なかった。 ・はルシウス・マルフォイの従妹であり(「私、彼の従妹なんです」)、その上ルシウスがを大切にしているという。(こちらは彼らが公言したわけではないが、ルシウスのに対する態度は明らかにそうと取れる) つまりそれは彼女にもマルフォイ家の血が流れていると言う事で。 それを考えるのなら、スリザリンに選ばれる可能性はある。 けれど。 「ねえルーシー、「猫まんま」って実際猫に食べさせ続けたら腎臓壊すと思わない?」 「何だそれは」 「ご飯に味噌汁ぶっ掛けたヤツよ」 「知らん」 …やはりスリザリン生らしくない。 (終) +−+◇+−+ えーっと、セブとヒロインの一年生の頃の話しを書こう書こうと思いつつ、実際書いてみたものの途中で話しが進まず、久し振りに書いたら書けたと言うシロモノ。 話しが進まなくなった作品って、時間を置くと案外書けるようになるモンなんですよね。 この頃はまだルシとヒロインが従兄妹同士って事はスリザリン生しか知りません。 ちらっと話しに出ましたが、ヒロイン、蛇飼ってます。ばっちり持ち込んでます。(をい) ナミヘビの大型で、イメージはイースタンインディゴスネークの真っ黒いやつ。まあその内出てくると思いますが。 この頃はまだ二人は出会ってないのでヒロイン、ひたすらルシウスと仲良しです。 (2003/07/20/高槻桂) |