祈り歌



「うん。約束する」
カッツェがふわりと微笑む。

『大好きだよ』

そう囁かれたような気がした。
この笑顔は俺だけのものだ。
何だ、目が霞んでくる。
もっとお前を見ていたかったのだが……
……仕方あるまい……

派手な音を立てて自分の肉体が地に倒れ落ちるのをどこか遠くで感じていた。
ああ、俺は死ぬのか。
この愛しい少年の手によって。
人間共を一掃する事は出来なかったが……悔いは、無い……

すぐ近くで自分を見下ろす少年を想う。

結局は、あの男と同じ事をした。

彼を愛し、彼に愛され、一つの約束を押し付けて彼を置いて逝く。

それでも、お前だけは生きろ。

他の何が死に絶えようとも、お前は生きろ。

身勝手な願いを押し付け、お前を置いて行く俺を
お前は許してはくれまい。

恨んでもいい。
憎んでもいい。

ただ、これだけは知っていてくれ。

俺はお前に出会えて、楽しかったぞ







(了)

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「恋歌」番外編です。「恋歌W」のルカ様が死ぬシーンの話。ルカ様の視点から書いてみました。本当は最後の一言は「幸せだったぞ」の予定でした。でもなんだかルカ様らしくないかな?と思い「楽しかったぞ」に変えました。まだ、こっちの方がルカ様らしい……よね?
ちなみにルカ様が言っていた「あの男」はソロンのことです。(え?言わなくてもわかるって?)本当はソロンの死際も考えていたんですが、何しろ資料が無くってね…(泣)よくわからなくなったんで止めました。
(2000/05/19/高槻桂)



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