500作記念企画

愛の揺り籠
(後藤×女達海/ジャイアントキリング)

※前中後その後です。


リビングで試合を見ていたら生海がベビーベッドの中で泣き出した。
立ち上がろうとする達海を制して後藤がベッドへと歩み寄る。
試合の歓声を聞きながら後藤はてきぱきとオムツを換え、それでもぐずる生海を抱えてゆったりと揺らした。
しかし生海の機嫌は一向に良くならない。
「腹へってんじゃね?」
「でもさっき飲んだばかりだぞ」
一応ミルク作ってこようか、と言えば、貸して、と手を伸ばされ、結局達海の手に委ねる事になった。
達海が縦に抱き、とんとんと軽く揺らすとふえ、と一声上げて生海は大人しくなった。
「生海は本当に良くわかってるな」
「何が」
「お前が母親だって」
「お前だって父親じゃん」
父親と母親は違うよ、と後藤は苦笑する。
「知り合いの子もな、母親以外が抱くと泣くそうだ」
「生海はそこまでじゃないだろ。美幸なんて誰にだってにっこにこしてたし」
「ああ。だけどやっぱり母親は特別なんだなって思うよ」
「……」
達海は何か考えていたかと思うと、むにむにと口を動かしている生海をひょいと後藤に預けた。
既に機嫌の良くなっている生海は今度は後藤の腕の中でも文句言わず大人しくしている。
「お前はね、俺の特別だからそれでじゅーぶんなの」
「……慰めてくれているのか?」
片腕を伸ばして達海を抱き寄せると、こてんと素直に身体を預けてくる。
「別に。そうじゃないけど」
「ああ。ありがとう」
両腕に愛しい存在を抱きながら、後藤は穏やかに笑った。



***
残念ながら美幸は学校です。(笑)リクエストありがとうございました!





何度だって言うよ
(後藤×女達海/ジャイアントキリング)

※前中後その後です。


達海と後藤の間に男の子が生まれたのは美幸の誕生日に程近い冬の日だった。
生まれる前から男の子だと分かっていたので名前も既に決まっていた。
生きる海、と書いていくみ、だった。
美幸が生まれた時も後藤の喜びようは傍から見ていてはしゃぎ過ぎだと思うくらいだったのだが。
今回もまた後藤のはしゃぎっぷりは酷かった。
まず携帯電話の待ち受けは言わずもがな達海と美幸と生海が写ったもので。
パソコンのデスクトップも似たような状態。
デスクの上には写真立てが増えた。
ここでストップすれば良かったのだが、後藤は暇そうなスタッフを見つけては家族自慢というか惚気始めたので被害者が出る始末だ。
しかも性質が悪い事に自分の仕事はきちんとこなしているのだから注意するにもしにくい。
ストッパーとなるはずの有里もついつい新たな命の愛らしさに負けてしまってその役目を果たせていない。
そんな時、後藤を諌めたのはなんと達海だった。
「お前ね、嬉しいのは分かるけどもう少し静かに喜べないの」
「煩くしたか?」
「そういう意味じゃなくて。ヒトサマに迷惑掛けないように喜びなさいって言ってんの」
昨日見舞いに来たヤツラが訴えてったぞ。とそう言えば、そんなに騒いだかな、と後藤は首を傾げた。どうやら無自覚らしい。
「まあ、気をつけるよ」
「そうして下さい」
「それにしてもお前に諌められるなんて珍しい経験だな」
苦笑する後藤になにそれ、と達海は唇を尖らせる。
「俺がいつも恒生に迷惑掛けてるみたいじゃん」
「違うのか?」
「違うよ」
あれは甘えてるの。堂々と言い放つ達海に後藤は思わずふっと吹き出して笑った。
「なんだよこーせい」
「なんでもないよ」
後藤は達海の手を取り、その指先にそっと口付けた。
「ありがとう、達海」
「なにが」
「生海を産んでくれて」
もう何度も聞いたよ、と達海は笑う。
そんな達海に何度でも言いたいんだ、と後藤も微笑った。
「俺と生きてくれて、ありがとう」



***
後藤が幸せすぎてウザイ。(爆)リクエストありがとうございました!





これが俺たち流さ
(後藤×女達海/ジャイアントキリング)

※前中後その後です。

美幸を保育園に送り出し、二人でクラブハウスへと向かうと監督室の前で何故か有里が待ち構えていた。
「どったの、有里」
何か急ぎの用?と小首を傾げると、有里は後藤と視線を合わせ、こくりと頷いた。
どうやら後藤も心得ているようで、同じようにして頷くと、ぽんと達海の肩を叩いた。
「じゃあ有里ちゃん、任せた」
「任せて!」
「へ、何が?」
何なの、二人とも。しかし達海の問いかけに答えてくれるものは誰もおらず、後藤はさっさと踵を返して事務室へと向かってしまった。
「達海さんはこっち」
引っ張られて連れ込まれたのは監督室。
が。
「ナニコレ」
見慣れたはずの監督室の中に純白のドレスが鎮座している。
「何って、ウエディングドレス」
「いや、俺だってそれ位わかるって。じゃなくて、なんでそれがこんな所にあるの」
「着る為に決まってるじゃない」
「お前が?」
「達海さんが」
「俺が?!」
有里はさーてと腕捲りをすると達海にジリジリと近付いてきた。
「観念しなさい、達海さん」


「何で俺がこんなカッコしなきゃなんねえんだよ。歩きにくいし」
「文句言わない!」
有里と達海のやり取りが聞こえてきて後藤は思わず笑ってしまった。
「いよいよですね」
スーツ姿の丹波がネクタイを弄りながら言う。
室内には丹波を初めとしてETUのメンバーが集まっていた。
「監督、楽しんでくれるといいっすね」
そうだな、と笑うと扉がゆっくりと開かれた。
「達海……」
隣で丹波がぴゅうと口笛を吹く。
世良と椿に至っては口がぱかりと開いたままだ。
現れた達海は、予想以上にドレスが似合っていた。
身体が女性化して丸みがあることも大きいだろうが、それを差し引いても余るものがある。
胸元を可愛く彩る三連のリボン。
オーガンジーをたっぷり含んだアシンメトリーのバルーンシルエットを描くスカート。
薄く施された化粧にピンクの口紅が愛らしい。
パパパパーンと突如鳴り響いた結婚行進曲に一同ははっと我に返る。
カセットデッキのスイッチを入れたジーノが苦笑していた。
「達海さん、ゆっくり後藤さんのところまで歩いてって」
はいはい、と言いながら達海が言われたとおりゆっくりと後藤の下へと向かう。
簡易ながらも赤い絨毯で作ったヴァージンロードの上を達海が歩いてくる。
「お前ね、こういうのは俺に一言相談しろっての」
辿り着いた達海からは早速苦情を受けたが、しかしその目はどこか面白そうな色を宿していてほっとした。
そうして二人が祭壇代わりの教卓の前に立つと、石神が某バスケ漫画を手に立っていた。
「なんなのその漫画」
「俺聖書なんて持ってないから俺なりのバイブル持ってきた」
えーとなんだっけ、と石神は適当にページを捲り、そうそう、と二人を見た。
「健やかなるときも、病めるときも、色んなときもこれを愛し、二人で頑張っていく事を誓いますか?」
省略しすぎだろ!と丹波が声を上げるが「だって俺全部なんて覚えらんねえよ」と石神がけろっとして言うものだから会議室の中は微かな笑い声で満ちていく。
「だめだ、俺笑う」
ふるふると震えていた達海も堪えきれずぶはっと吹き出して笑い始めた。
「何なのガミ、何でお前そんなに緩いの真顔なのていうか漫画捲った意味はなんだったの……!」
隣では後藤も明後日の方向を見て笑いを堪えている。
「で、二人とも、答えは?」
ち、誓います、と後藤がまず震える声で告げ、やがて達海もまた震える声で誓った。
「指輪の交換はもう各自で勝手にやっちゃってるみたいなのですっとばして、皆さんお待ちかね!誓いのチューのお時間です!」
イエー!とノリノリなのは世良と夏木と以外にも有里だ。椿はあっという間に赤くなって右往左往している。
「すんの?」
「……そうだな」
人前でキスをするなんて、といつもの後藤なら言いそうだが、この企画が持ち上がった時点で覚悟を決めたのだろう。
後藤の目に迷いは無いように見えた。いや、迷いが無い振りをしているだけか。
「濃厚なの頼むぜ、後藤」
「え、ええ?」
あからさまに動揺する後藤に、達海は冗談だよ、と笑ってその唇に顔を寄せたのだった。



***
あまり他の人を出せなくてしょんぼり。リクエストありがとうございました!

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