500作記念企画
育ちのプロセス (村越×女達海/ジャイアントキリング) ※前中後村越編その後です。 ロッカーで着替えていると、かちゃりと扉が開いて小さな男の子が入ってきた。 このチームのキャプテンである村越と監督である達海の間にできた子、猛人だ。 「あれー猛人じゃん」 世良の声に村越が振り返る。 「猛人、どうした」 猛人はぱたぱたと父親の元に走ると、ぽふんとその身体に飛び込んだ。 「おかあさんがね、おへやでねちゃったの。ぼくおこしたけどおきないの」 つまんない、不貞腐れたような声音にああ、と村越は思う。 ここ数日達海は戦略を練るために監督室に篭りっ放しだった。 目の下にも随分濃い隈を作っていたからとうとう限界が来たのだろう。 「疲れてるんだろう。そのままにしておいてあげなさい」 「おかあさんとあそべるとおもったのに」 だったら、と背後から猛人をひょいと抱き上げる腕があった。 「俺らが遊んでやろうか」 丹波が猛人を抱き上げ、ほーれと高い高いをする。 「コシさんは今の内に監督起こしてきてくださいよ。折角明日はオフなんですから監督も家に帰るでしょう?」 「ああ、すまない」 着替え終わった村越がそう謝ってロッカールームを出て行く。 それを見送って丹波はもう一度猛人を縦に揺らした。 「それにしてもお前重くなったなー」 持ってみろよ、と渡された先は堀田で。 受け取った堀田はあ、本当だ、などと言いながら同じ様に縦に揺らしている。 「ちょっと前まで赤ん坊だったのになー」 「たけとあかちゃんじゃないよ」 「そうかそうか、もうすぐお兄ちゃんだもんなあ」 石神が堀田の腕の中で喜んでいる猛人の頬を突く。 ぷにぷにの感触が好ましかったのか、何度も突いた結果、猛人に嫌がられていた。 「堺、お前も抱いてみろよ」 一人さっさと帰ろうとしていた堺は差し出された猛人を一瞬身を引いたが仕方なく鞄を下ろして受け取った。 「重くなっただろ!お前最後に抱いたの赤ん坊の頃だもんな」 「ああ……」 受け取ったもののじっと見上げてくる視線に耐えかねて辺りを見回すと、黒田と目があった。 「黒田、パス」 「え?!あ、はい」 ひょいっと渡されて黒田はおたおたしながらも猛人を受け取る。 すると猛人はきゃっきゃと喜んで黒田の頭を撫でた。 「クロじょりじょりー」 「猛人はクロの坊主頭が好きなんだよな」 杉江の言葉に、そういえば前に抱いたときもじょりじょりと黒田の頭を撫でていた事を思い出した。 「クロすき」 にこーとして言われて黒田は「そ、そうかよ」と照れたように視線を逸らした。 すると扉が開き、村越が顔を覗かせた。 「相手させてすまなかったな」 「いいっすよ」 杉江が荷物を渡すと黒田から降りた猛人が父親の元へと向かう。 「ばいばい。またね」 「おう、またな」 猛人は一同に手を振り、父親について部屋を出た。 父親の背後にはうつらうつらとしたままの母親が立っており、猛人は喜色を滲ませて母親に飛びついた。 「おかあさんおはよう!」 「あーうん、おはよー」 いくぞ、と促され達海が歩き出す。 その母親の手を右手に、そして父親の手を左手に握るとやんわりと握り返され、猛人は笑顔で玄関へと向かった。 *** 幸乃がお腹にいる頃の話のイメージで。リクエストありがとうございました!! 浴室悪戯 (後藤×達海/ジャイアントキリング) 達海は満月の夜になるとその身体が十歳前後になってしまう奇怪な体質の持ち主だ。 そして今日もまた、月がその輝きを天から照らす頃、達海の身体は子供のそれへと変わってしまった。 そんな達海に誘われて後藤は達海と共に風呂に入っていた。 普段は狭いからと嫌がる達海も、この姿の時ばかりは自分から一緒に入ろうと言って来る。 それ自体は嬉しい事なのだが。 「な、後藤、しようぜ」 これだ。 達海はいつからか子供の姿の時でも後藤を求めるようになっていた。 「ダメだ」 一度だけ流されて途中まで行った事があったが、結局後藤が自制心を発揮して挿入までには至らなかったのだ。 「えー」 文句を言う達海の頭をわしゃわしゃと洗ってやり、身体も洗ってやってから自分の髪を洗う。 「俺も後藤洗ってやるよ」 「ああ」 小さな手が後藤の髪を洗い、背中を流してくれるのは嬉しいのだが。 「こら、達海、そっちはいいから」 「なんでだよ、全部洗ってやるって」 ぬるりとボディーソープの泡でぬめった手が後藤自身を撫で、後藤は慌ててその手を引きはがす。 「そうやって煽ってもしないものはしないからな」 「でもこっちは反応してるぜ」 「そりゃお前に触られればそうなるさ」 照れを隠すように憮然として言えば、達海はじゃあさ、と身を乗り出して後藤の目尻にキスを落とした。 泡塗れの後藤に擦り寄ってくる達海の白い肌に一層白い泡が移っていく。 「最後までしなくていいから、触りっこしようぜ」 幼い面持ちで怪しく笑う達海の姿に、後藤は自分の中の理性ががらがらと音を立てて崩れていくのを聞いた。 *** 触りっこという単語を使いたかっただけなんだ…!(爆)リクエストありがとうございました!! わんにゃん恋事情 (椿×達海/ジャイアントキリング) ジーノは犬を飼っている。 それは人の形をしていて、けれどそれぞれの耳は犬のもので。尻尾だってある。 別にコスプレをしているわけではない。彼はそういう生物だった。 名を、椿という。 散歩の時間が近くなるとそわそわしっぱなしの椿にジーノは仕方ないねえと笑ってリードを取り出した。 外を歩いていると、同じ様に犬耳尻尾を生やした人の形をしたその生物をつれた人と擦れ違う。 相手に軽い会釈をしてジーノはいつもの散歩コースを椿を共に歩いていく。 ジーノはサッカー選手だ。 そしてそのジーノが所属するチームのクラブハウスの近くへ差し掛かると椿が一層そわそわしだす。 ああ、彼が来たのだな、とジーノは悟って椿の肩を叩いた。 「バッキー、嬉しいのは分かるけど、この間みたいに飛びついたらダメだよ」 こくこくと頷く椿に、本当に分かっているのだろうかと少し疑問に思っていると、「彼」が物陰から姿を現した。 「やあ、タッツミー」 タッツミーと呼ばれた彼は猫の耳に尻尾を生やしていた。 その首には臙脂色の首輪が巻かれ、ネームプレートには「達海」と書かれている。 「今日も会いに来てくれたんだね」 嬉しいよ、と微笑うジーノに達海はまるで「お前じゃない」と言う様な視線を向け、椿に歩み寄った。 そして緊張のあまり硬直している椿の頬に己の頬をすり、と摺り寄せるとにかっと笑った。 すると椿も緊張がほぐれたのか、ぱっと笑顔を浮かべて顔を摺り寄せた。 目の前でべたべたとする二人にジーノはやれやれと肩をすくめて軽くリードを引いた。 じゃあ、行こうか。ジーノが歩き出すと二人も歩き出す。 並んで歩く二人の尻尾が遊ぶように揺れるのを見て、ジーノはふふっと楽しげに笑った。 *** 達海と椿は散歩仲間。リクエストありがとうございました!! |