500作記念企画
それでもすきだったのに (椿×女達海/ジャイアントキリング) ※前中後シリーズ椿バージョンです。 偶然だった。偶然、知ってしまった。 監督が女性にもなれる体質、先天性転換型両性具有だって。 そこからすべては始まった。 俺は監督の秘密を守る代わりに、という名目で監督と寝た。 そういうことをして初めて、俺は監督の事が好きだと気付いた。 だけど監督はそういうのは求めて無い感じで、俺も言うのが恥ずかしくて何も言えなかった。 何より、想いを告げる事によってこの関係が終わってしまうのが嫌だった。 けれど言おうと言わなかろうと終わりは突然訪れた。 監督はみんなに自分が先天性転換型両性具有だって告白して、後藤さんと付き合ってるって言った。 ショックだった。 つい先日まで自分の腕の中に居た人が、本当は違う人を愛していただなんて。 けれど仕方ないとも思った。 元々秘密を守る代わりに監督は俺と寝ていたのだから。 だから祝福しようと思った。哀しかったけど、祝福しようって。 なのに。 三年も経ってから、あの人は言ったのだ。 あの子は俺の子だって。 だけど監督がもう俺を見ていないことなんてとっくにわかってた。 だから、幸せにしてあげてください、って言うしかなかった。 あの頃の俺はまだプロになったばかりで、自分の事で一杯で、収入だって少なくて。 情けない姿ばかり見せていたから仕方ないって思うけれど。 思うのだけれど。 それでも俺は監督が好きだった。 どんなに大変でも、一緒にいたかった。 今ではもう、全てが遅いのだけれど。 二人で、生きていきたかったのだ。 *** 前中後椿バージョンでした。リクエストありがとうございました!! たまごまごまご (持田×女達海/ジャイアントキリング) ※「好きを免罪符にして」関連です。 「お前ら、卵焼きって何味が好き?」 達海が突然そう聞いてきて、休憩していた一同は顔を見合わせた。 「俺は何も入ってないのが好きです」 「俺はだし巻き」 「自分は甘いのっすね」 代表的な意見はこの三通りだった。 達海は頷くと、だったらさ、と二つ目の質問をした。 「もし自分の好みじゃない味の卵焼きが出てきたらどうするよ」 一同は少し考えた後、別に気にしませんよと返した。 「別にそれじゃなきゃ食べれないってワケじゃあるまいし」 「だよな、そうだよな!」 石神の言葉に達海はぐっと拳を握ってあの野郎、と呻くように言った。 「また持田と何かあったんですか」 「あったも何も!あの野郎、俺が作った卵焼きは卵焼きじゃないって言うんだぜ?!」 そんな事か、と一同はげんなりとする。 「で、どんな卵焼き作ったんすか」 石神が興味本位に聞くと、ふつーのだよ、と応えが返ってくる。 「普通に卵と砂糖入れて焼いただけ」 「ふつーじゃないって」 背後から掛かった声に振り返ると、ネット越しに持田が立っていた。 「砂糖入れすぎだっつの」 「あれぐらいの方が甘くて美味しいじゃん」 「達海さんのは限度って物が無いんだよ」 あれじゃ砂糖菓子だよ、と言う持田にどれだけの砂糖を入れたのかと疑う。 「あーもう食べ過ぎて胸焼けする」 溜息をつく持田になにそれ、と達海が決まり悪げに問うた。 「お前食べる気しないって言ったじゃん」 だから勝手にしろと言い捨てて部屋を出てきたのだが。 「俺が達海さんの作ったもの残すと思ったの」 当たり前のように言い捨てられる言葉に達海は恥ずかしそうになにそれ、とまた呟いた。 そんな二人を眺めていた一同は勝手にしてくれ、とグラウンドへと向かったのだった。 *** 私はだし巻き派です。(どうでもいい)リクエストありがとうございました!! 気になるあなた (夏木×ジーノ/ジャイアントキリング) ※前中後その後です。 「幸せにおなり」 そう笑った笑顔を今でも覚えている。 お前もな、とは言えなかった。 ただ頷くだけしか、できなかった。 最近、ジーノと村越の仲が気になって仕方ない。 よく二人で話しているし、どうやら家に行ったりもしているようだ。 村越に何かを話しかけて笑っているジーノの姿に夏木はもやもやとした気持ちが湧き上がるのを抑え切れなかった。 あいつ、コシさんと付き合ってるのか? そんな考えが浮かび、ふるふるとそれを振り払うように頭を振る。 いいや、アイツが好きなのは……。 そんな考えも虚しい。 嫁も娘もいる自分が言えた義理じゃない。義理じゃないけれど。 「何をじろじろ見てるんだい、ナッツ」 「!」 不審げな視線を受け、夏木はぶんぶんと顔の前で手を振った。 「いや、なんでもねーよ!」 「そう。だったら用もなく見ないでくれる?減るから」 「なっ!何が減るってんだよ!」 「僕の気品とか英気とか」 すぱんと言い返され、ぐうと言葉を詰まらせる。 口で勝てるわけが無いと分かっていても少し悔しい。 「……仕方ないね」 むぎぎと歯噛みする夏木をどう思ったのか、ジーノは肩を竦めて今夜ウチにおいでよ、と夏木を誘った。 「言いたい事があるなら、その時聞くよ」 じゃあね、と手を振ってグラウンドへと向かうジーノの後姿を夏木はぽかんと見送った。 ジーノの部屋は相変わらずこざっぱりとしていて、けれど調度品にはさりげない高級感があった。 真っ白のソファに座り、君にはこちらの方が良いだろう?とビールを手渡され。 一息ついたところで夏木は意を決してジーノに聞いた。 「お前さ、コシさんと付き合ってんのか?」 するとジーノは数秒夏木の顔を見つめ、やがて呆れたように溜息をついた。 「何だ、そんな事だったの」 「そ、そんな事って何だよ。俺は……」 「本当にバカだねえナッツは」 「バ……」 バカとはなんだ、と言い返そうとして、けれどジーノが慈しむような苦笑を浮かべていたので思わず口を噤んだ。 「僕とコッシーはね、似たもの同士なんだよ」 似たもの同士?夏木が小首を傾げるとジーノは苦笑を深めてビールを煽った。 「ナッツは本当に無神経だね」 「……何でだよ」 「今更言わせるのかい」 ことりと缶をテーブルの上に置くと、ジーノも同じ様に缶を置いた。 「……言えよ……言ってくれよ」 じっと見つめながらそう言えば、ジーノは仕方ないね、と言う様に首を横に振った。 「僕が君を好きだと知っていて、そういう事を聞く君は本当に無神経だ。無粋でもあるね」 「だったら、なんで……」 「言ったじゃないか。僕とコッシーは似たもの同士なのさ。愛する者と結ばれる事のなかった、ね」 僕はもう通り越してしまったけれど、彼はまだ苦しみの中にいる。 「だから少しだけ、手助けをしてあげているだけさ」 じゃあ、と夏木が戸惑うように問いかける。 「お前は今でも俺を、その……」 「好きだよ」 不本意だけれどね、と彼は微笑う。 その微笑みに引き寄せられるように夏木が顔を寄せると、ダメだよ、と唇に手をあてられた。 その代わり、とジーノが夏木に向けて腕を緩く開いた。 「おいで、ナッツ。抱きしめてあげる」 誘われるがままに腕を伸ばし、夏木はジーノの腕の中に納まった。 きゅうと優しく締め付けられ、夏木もまたジーノの身体を抱きしめる。 細くとも鍛えられたジーノの身体が、酷く恋しかった。 *** こんな感じで良かったんでしょうか?(汗)リクエストありがとうございました!! |