500作記念企画
解れる気持ち (熊田×達海/ジャイアントキリング) 「ここ、気持ちいいですか?」 「ん、キモチイイ……」 熊田の問いかけにうっとりとした声音で答えるのはこの部屋の主である達海だ。 「あー……」 ぎゅ、ぎゅと等間隔で肩に加えられる刺激に達海は間の抜けた声を漏らす。 「凄く凝ってますよ。しんどくなかったですか」 「ちょっとねー。でもまあ慣れてるし」 あはーと笑いを漏らす達海に、そんなこと慣れないで下さい、と熊田が苦笑した。 「……はい、これで暫くは楽だと思いますよ」 ぽんと肩を叩かれて終わりを告げたそれに達海はぐるりと肩を回して喜んだ。 「おー軽い軽い」 そして悪いね、と熊田に全く悪いと思っていなさそうな表情で笑いかける。 「選手のお前にこんなことさせて」 その笑顔に熊田も構いません、とにこりと微笑った。 「あなたに触れられるチャンスですから」 「なに、下心アリなの?」 にひーと笑う相手に熊田はそうですよ、と澄まして言った。 「あわよくばお礼にキスの一つでも貰えたらって思ってます」 にっこり笑顔で堂々と言う熊田に達海はなあんだと自らの唇を指差した。 「キスだけでよかったのか?」 すると熊田は少し目を見開いた後、この人は、と苦笑した。 「試されているんでしょうか、これは」 「どうだろー?」 試さないでくださいよ、と熊田は達海に顔を寄せて囁いた。 「俺はあなたが思ってるほど、我慢強くないんですよ」 *** 初熊田!熊田は達海を甘やかせばいい!!リクエストありがとうございました!! それがイイんじゃないの (後藤×女達海/ジャイアントキリング) ※前中後シリーズとは別です。 達海は先天性転換型両性具有という、簡単に言うなら男でありながら女にもなれる体質の持ち主だ。 その事を後藤が知ったのは達海がまだ現役だった頃。 二人が恋人となるその日に達海の口から知らされた。 それから十年以上、後藤は達海の秘密を誰にも漏らす事無く生きてきた。 そして再会して、依然と変わらず達海を愛している事を告げると達海はそれを受け入れた。 幸せな日々が戻ってきた。そう信じていた。 のだが。 ある日目が覚めると後藤は達海だった。そして達海は後藤だった。 信じられないことだが、心と身体が入れ替わっていたのだ。 さんざパニックに陥って漸く落ち着きを取り戻した後藤と、あっさりと現状を受け入れた達海。 「まあ、何とかなるだろ」 気の無い声音を吐く自分の姿に激しく違和感を感じながら後藤はしかしだな、と達海の声で喋る。 しかし達海はそんな事よりさ、と『達海』を押し倒した。 「な、何だ」 自分に押し倒されている状況に混乱しながらも見上げると、どう?と聞かれて余計混乱する。 「何がだ」 「覆いかぶさられてみて、どうよ」 にやにやと意地の悪い笑みを浮かべる自分の顔に閉口しながらも少しだけ恐怖感を感じた。 自分の身体より大きなものに覆いかぶさられるという反射的とも原始的とも言える恐怖感だ。 「折角なんだし、俺の視点、味わってみれば?」 するりと『後藤』の手がシャツの裾から滑り込んでくる。 反射的に逃れようとするが簡単に押さえ込まれてしまった。 「……っ……」 『後藤』の手が『達海』のふっくらとした胸元に辿り着き、ぴしんとフロントホックを外す。 大きな手がその乳房を覆い、ゆっくりと揉まれて『達海』は微かに眉を寄せる。 「気持ちいいか?『達海』」 むず痒いような感覚。そこに後藤の口調を真似た達海の声に妙な気分になってくる。 自分の声に欲情する趣味は無いつもりなのだが。 きっとこれは達海の身体が覚えている事なのだろう。そう思うとむず痒いような感覚は一層強まった。 「っ」 きゅっと尖りを摘まれて『達海』は溢れそうになった声を喉の奥で噛み殺す。 「これね、俺、好き。強めにされると堪んない」 分かるでしょ、と囁かれるが、初めて感じるじんわりとした熱が胸と下肢に広がって応えを返す処では無い。 「ここ弄られてると、下も触って欲しくなるだろ」 触っていい?と耳元で囁かれ、ぞくぞくした痺れが背中を走るのを感じながら『達海』はそれでも必死でその胸板に腕を突っ張った。 「だ、めだ達海……」 「何で?気持ちいいだろ?」 「そういう問題じゃなくて!」 やっとの思いで『後藤』を押し退けると、後藤はああもうと疼く身体を宥めるように手荒に乱れた服を直した。 「自分に抱かれるのは嫌だ」 「中身は俺だよ」 「……それでも、だ」 頑として譲らないという姿勢を露わにすると、やがて達海はつまんないの、とソファにだらっと凭れ掛かった。 「せめて身体が元に戻ってからにしてくれ」 「戻ってからなら俺が襲ってもいいの?」 胡乱げな目で見られて後藤はうっと言葉を詰まらせる。 「……吝かではない」 漸く搾り出した応えに、後藤の姿をした達海はハハッと笑った。 *** あれ?これってタツゴト?(爆)リクエストありがとうございました!! ハイとイイエは正確に (後藤×達海/ジャイアントキリング) 「……あれ?」 寝室に入ると、違和感を感じて「そこ」を見た。 今朝家を出るときまでは普通の枕が二つ並んでいたはずのその場所に、フリルのたっぷり使われたハート型のクッションが置いてある。 一つはピンクで表面に「YES」と描かれており、もう一方はブルーで「NO」と絵が描かれている。 「うわ、懐かしい」 思わず手にとって裏返してみると、YESの裏はNOになっており、逆もまた然り。 すると扉が開いて風呂から上がったばかりの達海が頭をタオルでがしがしと拭きながらやってきた。 「達海、どうしたんだこれ」 後藤の問いかけに達海は「貰った」とだけ答えてベッドにとすんと座った。 「貰ったって、誰に」 「丹波」 「丹波が?」 「なんか同窓会でビンゴやったらしくてさー。その景品。いらないからって押し付けられた」 せっかくだから並べてみた、という達海にじゃあ元あった枕はどうしたんだ、と問えばクロゼットの中、と返された。 でさ、と達海がごろりと寝そべって枕を引き寄せる。 「今日の俺はどっちだと思う?」 YESとNOどちらも表を向けられて示されたそれに、後藤はそうだなあと笑ってNOが表になっている方の枕を達海の腕から抜き去ってベッドの下に落とした。 達海の腕に残されたのは、YESを表にした枕一つ。 「俺としてはこうあってほしいけどな」 じゃあ、と仰向けに寝転がった達海が腕を伸ばして後藤を誘う。 「YESな気分にさせろよ」 「仰せの通りに」 後藤は誘われるがまま覆いかぶさり、その唇に自らの唇を寄せた。 *** 最初は「NO」を突きつけてやろうかと思ってましたが甘い路線に変えました。(笑)リクエストありがとうございました!! |