雰囲気的な言葉の欠片:雪月花

01.雪どけの音色
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

※前中後のその後です。


美幸が生まれたのは、雪解けの進む麗らかな冬の日だった。
その産声を後藤は達海の手を握りながら聞いた。
生まれて初めて嬉し泣きをした日だった。
それから暫くして、達海の身体は産褥期が終わると同時に男の体に戻ってしまった。
一定の周期で女性化する達海の体質は達海自身、多少なりとも負担を強いられているようだったが、今では彼なりに楽しんでいるようだった。
仕事をしながらの子育ては大変だったけれど、そこに達海がいると思うと何て事ない様に思えた。
何より同僚である有里たちが率先して手伝ってくれたのが何よりも大きいと後藤は思っている。
それから三年。
美幸は三歳を迎えた。
まだたったの三年だけれど、それは物凄い僥倖のように思えて後藤は感極まって泣いた。
毎年のそれに達海は「お前ほんと親ばかだよな」と苦笑していたけれど。
達海の瞳もまた潤んでいたことを、後藤は知っている。
この幸せがいつまでも続けば良いと。
後藤は毎日、祈っている。



***
親ばかゴトさんとそんなゴトさんが愛しいタッツ。





02.月を追いかけて
(村越×達海/ジャイアントキリング)

※前中後のその後です。


あの人は月の様だと村越は思う。
すぐそこにあるように見えるのに、どれだけ手を伸ばしても届かない。
どれだけ追いかけても追いつけない。
ただそこに静かに存在する光。
あの人は狡い。
そうやって光を見せ付けておきながら手を伸ばすことを許さない。
捕らえておいて、なのに幸せになれだなんて言うのだ。
離れられないと知っているくせに。
その視線はもう、村越を見ない。
ただひたすらにあの男と娘に注がれている。
村越に注がれることのなかった柔らかな視線を。
何が間違っていたのだろうか。
彼に触れた事、それ自体がもう間違っていたのだろうか。
今ではもう、何が間違いだったのか、分からない。



***
タッツは太陽、ニョタッツは月のイメージで。





03.花咲く日々に
(??×達海/ジャイアントキリング)

※前中後のその後です。


十分間の休憩を言い渡し、美幸の姿を探せば彼女はとてとてと達海に駆け寄ってくる所だった。
「おかあさん、はい」
差し出された小さな手には、何処で摘んで来たのかシロツメクサが握られていた。
「ありがとな、美幸」
それを受け取った達海はふと何かを思いついたように美幸を見た。
「美幸、ちょっとじっとしてろよ」
「?」
シロツメクサをすいっと美幸の髪に差し込む。
達海と同じく猫っ毛の美幸の髪にそれは難なく挿さった。
「うん、可愛いぞ美幸」
「みゆきかわいい?」
「お姫様みたいだ」
達海の言葉に気を良くしたのか、美幸はにっこりと嬉しそうに微笑った。



***
三歳って意外としっかり物事話すので時々びっくりします。

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