雰囲気的な言葉の欠片:朝昼夜
01.朝もやの向こうに (後藤×達海/ジャイアントキリング) 後藤は霧の中を歩いていた。 それが朝もやだと気付いたのは、時折差し込む光の加減からだった。 ただ道なりにまっすぐに歩いていると、行く先に見知った後姿が見えた。 「達海?」 しかし達海の姿は朝もやの中に消えてしまう。 「達海!」 後藤が慌てて追いかけるが追いつけない。 おかしい。アイツはそんなに早く走れる足じゃないのに。 それでも達海を追いかけて朝もやを抜けると、そこには達海がいた。 正確には、三人の達海がいた。 三人の達海は後藤を待っていたと言わんばかりの表情で、唇には薄い笑みすら刷かれている。 「後藤、お前の達海はどれだ?」 真ん中の達海が言う。 「俺の、達海?」 そう、と左側の達海が笑う。 「お前を愛してる達海」 真ん中の達海も笑う。 「お前を親友と思ってる達海」 右側の達海も笑う。 「お前を同僚としか思ってない達海」 「「「お前の知る達海はどれ?」」」 「俺の、知る、達海は…」 後藤が恐る恐るそれを口にすると、選ばれなかった二人の達海は砂になって死んだ。 「おめでとう、後藤」 一人残った達海が言う。 「これがお前の真実だ」 *** 不思議の国の後藤。(笑) 02.透明な昼下がり (後藤×達海/ジャイアントキリング) ある昼下がり、達海がホットケーキが食べたいと言うので、後藤は作ってやることにしました。 けれど後藤の家には小麦粉がなかったので、後藤は自分の右足を小麦粉に変えてホットケーキを焼きました。 「俺、これ好きなんだ」 達海は出来上がったホットケーキを美味そうに頬張りました。 余りにも嬉しそうに食べるので、後藤も嬉しくなりました。 次の日、また達海がホットケーキが食べたいと言うので、後藤は作ってやることにしました。 けれど後藤の家には小麦粉がなかったので、後藤は自分の左足を小麦粉に変えてホットケーキを焼きました。 「俺、これ好きなんだ」 達海は出来上がったホットケーキを美味そうに頬張りました。 余りにも嬉しそうに食べるので、後藤も嬉しくなりました。 その次の日もまた、達海がホットケーキが食べたいと言うので、後藤は作ってやることにしました。 けれど後藤の家には小麦粉がなかったので、後藤は自分の左腕を小麦粉に変えてホットケーキを焼きました。 「俺、これ好きなんだ」 達海は出来上がったホットケーキを美味そうに頬張りました。 余りにも嬉しそうに食べるので、後藤も嬉しくなりました。 その次の次の日もまた、達海がホットケーキを食べたいといいました。 けれど後藤は困ってしまいました。 右腕も小麦粉に変えてしまったらどうやってホットケーキを作ればいいのだろう。 達海に相談すると、達海は言いました。 「じゃあいいよ、ホットケーキじゃなくて」 言っただろ? 「俺、これが好きだって」 達海が随分小さくなってしまった後藤を抱きしめたので、後藤は嬉しくなりました。 「いただきます」 そうして後藤は達海に食べられてしまいました。 達海と一つになれた後藤はとても幸せでした。 *** おしまい。 03.群青に沈む夜 (後藤×達海/ジャイアントキリング) びくりと身体を揺らして目を覚ませば、そこは自室のベッドの上だった。 まだ夜明けには今一歩早いらしく、室内は群青色に沈んでいる。 「…ごとー?」 傍らでもそりと動く気配がする。達海だ。 「悪い、起こしたか」 「ん…へんなゆめでもみた?」 夢。 「ああ…確かに変な夢だったな…」 「ふうん」 あ、そうだ、と達海は何でもないことのように続けた。 「朝飯はホットケーキがいい」 ぎくりとして達海を見ると、達海はしっかりと眼を開いてこちらを見ていた。 「達海…?」 後藤、と達海の唇が笑みの形を彩る。 「『俺』を選んでくれてありがとう」 *** この達海がどの達海なのかはご想像にお任せします。(笑)← |