雰囲気的な言葉の欠片:春夏秋冬

01.春雪の午後には
(深作×達海/ジャイアントキリング)

僅かな間ちらついた春雪に達海は首を竦める。
寒いのは苦手だ。
すぐに眠たくなるし足は痛みを訴える。
春なのに雪が降るなんてどうかしている。
そんな事を思いながらコンビニでも行こうとクラブハウスを出た。
するとクラブハウスの近くでうろうろしている男を見つけた。
向こうは達海に気付いていないらしく、忙しなく行ったり来たりを繰り返している。
ウチに用なのだろうか、それにしても帽子を目深に被っていて不審だ。
後藤に言った方が良いのかもしれない。
そう思いながら相手をじっと見て、達海はまさかと思った。
「…フカさん?」
「?!げっ」
不審者は十年ぶりの元チームメイトだった。
彼は達海の姿に驚くと、咄嗟にだろう、踵を返して逃げ出した。
「待ってフカさん!フカさっ…っ…」
慌てて後を追うが、途端左膝に走った痛みで達海はバランスを崩した。
「!達海!」
不自然な倒れ方をした達海に気付いた深作が駆け戻ってくる。
「大丈夫か、達海!」
「…ってて…だから寒いのは嫌なんだよ…」
文句を言いながらも上背を抱き起こしてくれる深作の腕を掴むとその腕が震えた。
「フカさん、どうしてここにいるの?」
見上げると、深作は逡巡した後に視線を逸らして答えた。
「…お前を見にきたんだよ」
思わぬ言葉に達海が目を見張る。
「何も調べず来ちまったからオフだなんて思わなくて、けど、その…」
「俺に会いに来てくれたの?」
「ばっ、ちがっ、お前を見に来ただけで、会いに来たわけじゃ…!」
「でも、来てくれたんだ」
深作はぐっと言葉を詰まらせて達海を見た。
「…来て、フカさん。中で話そう」
達海はゆっくりと立ち上がると、深作の手を引いてクラブハウスへと向かう。
決して強い力ではなかったけれど、その手から逃れられないと悟った深作は無言で達海の後に続いた。



***
深作や松本とか十年前のチームメイトってもう出てこないんですかね?





02.目覚めのような夏の色
(羽田×達海/ジャイアントキリング)

「見て、羽田。雲ひとつない青空だ」
そういって空を指差すと、羽田も同じ様に空を見上げる。
「ああ、そうだな」
「目が覚めるような、ってこういう事を言うんだな」
「……」
不意に立ち止まった羽田に達海の足も止まる。
「羽田?」
「…何処へも行くなよ」
潔いほどの青が何を予感させたのか。羽田はそう言って達海を見る。
「行かないよ」
薄く笑う達海にどうだか、と羽田は鼻を鳴らす。
「アンタは前科があるからな」
「もう、行かない。ここにいる」
羽田の傍にいるよ。
「…ちっ、早く帰るぞ」
足早に歩き出した羽田の後を達海が追う。
「どうして?」
「外じゃアンタを抱きしめることも出来ないだろ」
珍しい羽田の物言いに、達海は破顔する。
「ここでもいいのに」
「俺がよくねえんだよ!」
速めの歩調は緩まぬまま。
二人は帰路を辿っていった。



***
そろそろ達海を受け入れている羽田さんを書いてみようと思ったらこんな事に。(爆)





03.日向の秋桜(コスモス)
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

クラブハウスを出た所でくいっと達海が後藤の袖を引いた。
「後藤、あんなトコに花咲いてる」
あんなトコ、と指されたのはクラブハウスの片隅。
そこには背の高いピンクの花が一輪だけ咲いていた。
「ああ、コスモスだな」
「あ、そうそう、コスモスコスモス。何であんなトコ咲いてんの」
「多分種が何処からか飛んできたんだろう」
「ふぅん」
「達海?」
どこか含みのある声に問いかければ、別に、と応えが返ってくる。
「ただ、あんなトコに一本だけで可哀想だなって思って」
子供のようにそういう達海に後藤は大丈夫さ、と微笑った。
「種が落ちれば来年にはきっと、増えてるよ」



***
コスモスって大量繁殖しますよね。びびる。





04.冬の夜が明ける頃
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

ふと目が覚めて後藤は枕元の時計を見た。
午前四時。
朝ではあるけれど、起きるには大分早い時間だ。
達海は今頃何をしているだろうか。ぼんやりと思う。
眠っているだろうか。
それともまたDVDを夜通し見ているのだろうか。
そんな事を考えている自分に気付いて後藤は苦笑する。
寝ても醒めても達海の事ばかり考えているじゃないか。
十年経っても何も変わっちゃいない。
この腕の中に達海がいないことが寂しい。
あの温もりが恋しくて後藤はシーツに深く潜り込む。
せめて家を出るまでの数時間、夢の中で逢えるように。
達海、お前に逢いたい。
後藤はそう願ってきつく目を閉じた。



***
これで寝坊したら笑えるww

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