選択課題・ラブラブな二人へ

遠出をする
(羽田×達海/ジャイアントキリング)

その日、羽田と達海は横須賀に来ていた。
どっか遠くへ行きたい、と言い出した達海の要求を聞いての事だった。
実際の所、東京から横須賀などそれほど遠いとは羽田は思わなかったが、東京を出たことで達海は十分満足だったらしい。
「俺、フットボール以外で東京出るのすげえ久しぶり」
とは達海の言で、その言葉の通り彼はひたすらきょろきょろとしていた。
「おい、余りうろちょろすんなよ」
「わかってるって」
二人はどぶ板通りをのんびりと歩きながら店を物色する。
「羽田、似合う?」
売り物のスカジャンを胸に当てて笑う達海に、似合ねえと切り捨てて次の店へと向かう。
無数のワッペンの並ぶ店では達海の目が一層輝いて、そこだけでかなりの時間を食ってしまった。
どうやらごちゃごちゃした店ほど達海の興味を引くらしく、まるで子供だと羽田は思う。
達海にとってここは玩具箱のようなものなのだろう。
通りを抜ける頃には大分日も傾いていて、どうする、と問えばフネが見たいと言ったので歩いてヴェルニー公園まで行く事にした。
季節が季節ならば薔薇で美しい公園も今は何の変哲も無い公園だ。
「羽田、あれなんだっけ、あのでっかいの!」
「空母だ。今はジョージ・ワシントンだな」
「すっげえな!隣のやつ潜水艦だろ?あれもアメリカの?」
「アレは日本のやつだ。詳しくは知らねえ」
「羽田、あっちのは?」
「あっちは海自の総監部だ。あそこにいるのが護衛艦。あと柵に掴まるのはよせ。あぶねえ」
達海はへいへいと言いながらも素直に従う。
「それにしても何でそんなに詳しいの」
「普通だろコレくらい」
普通じゃないよーと達海が文句を言った。
「だって俺そんなの全然知らないしー!」
「アンタを基準にするな!もう良いだろう、そろそろ帰るぞ」
えーと不満げな達海だったが、彼自身、明日の練習が午前中からだという頭があるのだろう、結局は大人しく従った。
「なあ羽田」
汐入駅へ向かいながら達海が聞いてくる。
「これってデート?」
「…知るかよ」
ふいっとそっぽを向いて、けれど否定はしなかった羽田に達海は笑みを浮かべた。
「じゃあ、デートだ」
また来ような、というと返事は無かったけれど。
達海はそれで満足だった。



***
趣味に走りましたサーセン団子wwww





帰りを待つ
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

後藤の部屋の冷蔵庫にはいつもドクター・ペッパーが数本常備されていた。
毒々しい赤いパッケージのそれは、当然のように後藤が飲むためではなく、達海が飲むために常備されている。
しかしこの日はたまたまそれを切らしていて、達海は「ドクペ買ってくる」と部屋を出て行ってしまった。
ここから一番近いコンビニまで歩いて十分。買うまで五分。帰ってくるまでにもう十分。
達海は俺が帰ってくるまでに夕飯準備しておけよ、と言っていたがどうにもやる気がおきない。
それは達海の不在が原因だと後藤は分かっていた。
達海が出て行って二十分。
今頃は帰路についている頃だろう。その筈だ。
しかし消しようも無い不安が身体の奥底から湧き上がってくるのを止められない。
事故に巻き込まれたりしないだろうか、とか、そういう心配も勿論ある。
けれど、何より心配なのは、達海がちゃんとこの部屋まで戻ってきてくれるだろうか、という事だ。
勿論、達海が道順を覚えていないかも、なんてことは心配していない。
心配なのは達海が気を変えて何処かへ行ってしまうことだ。
たったの三十分にも満たない時間。
それすらも後藤の不安を煽るには十分な時間で。
迎えに行こうか、と椅子を立った途端、玄関の扉が開く音がした。
達海が帰ってきたのだ。
そう思った途端、後藤は脱力して再び椅子に座り込んだ。



***
十年待てたからって、五分が待てるわけじゃないんだ。





怪我の手当て
(椿×達海/ジャイアントキリング)

ぴりっと指先に走った痛みに達海は咄嗟に手を止めた。
「いちっ…紙で指切った」
「だ、大丈夫ですか?!」
傍らで一緒に資料を覗き込んでいた椿が慌てふためく。
「大丈夫だって、これくらい」
「で、でも、血が…」
人差し指の先に薄らと滲む一線の赤。
すると達海は椿に向かってその指を差し出した。
「椿、舐めて」
「え、えええ?!」
「こういう傷はな、舐めときゃ治るんだよ」
ほら、舐めて?
差し出された指に、ごくりと椿は喉を鳴らした。



***
監督の指の傷はすぐに治ったそうです。





思い切り泣き叫ぶ
(緑川×達海/ジャイアントキリング)

達海は酔っていた。しかも絡み酒だった。最悪だ。
しかしそんな達海を嫌な顔ひとつせず相手をしているのが緑川だった。
「ドリはーむっつりなの?それともホントに枯れてんの?」
そんな答えにくい質問にも緑川は苦笑して答える。
「枯れちゃいないと思うがな」
「じゃあ何でえっちしないの。やっぱ枯れてんの?」
実を言うとこのやり取りはもう既に三回目である。
それでも緑川は根気強く付き合ってくれている。
「明日早いのに、今手を出したら明日達海さんに怒られそうだからな」
「怒んないよ。しない方が怒る」
にじり寄ってくる達海を膝の上に乗せ、緑川はその髪を撫でた。
「今日はもう寝な」
「……」
すると達海はきゅっと顔を顰めたかと思うとなんとぽろぽろと涙を零し始めた。
「た、つみさん?」
さすがの緑川もコレには驚いて目を丸くする。
「ドリは俺の事好きじゃないんだー」
そんなのやだぁと泣き始めてしまった達海を緑川はよしよしと抱き寄せて揺する。
「ひろしのばかあああ」
えぐえぐと泣き続ける達海の目尻に口付けを落とすと涙の味がした。
そのまま瞼、額、鼻先、顎、そして唇へと小さなキスを落としていくとやがて達海が泣き止んでいく。
「ドリ、俺の事好き?」
「ああ、好きだ」
「愛してるくらい好き?」
「ああ、愛してる」
「えっちしたいくらい好き?」
「ああ、今だって抱きたいくらいに愛しいぜ」
じゃあして、と達海から口付けてきて緑川はそれに応える。
明日目が覚めて、この事を達海は覚えているだろうかと思いながら。



***
誰、これ。(真顔)





ビンタ
(持田×達海/ジャイアントキリング)

ぺちん、と。
軽くではあったけれど、叩かれたのだと気付いたのは数秒経ってからだった。
「な、にするんだよ!」
このときばかりは簡単な敬語すら忘れて目の前の男に食って掛かった。
「取り消せ、今の言葉」
男は、達海は厳しい眼で持田を見る。
「お前が現役を退いて悔しいのは分かる。けれど、今の言葉は良くない」
「……」
勢いに任せて言い過ぎたと持田自身分かっていたので返す言葉が無い。
やがてすみません、と小さく謝ると達海は漸く表情を和らげた。
「…うん。わかってくれればいい」
ごめんなモッチー。叩いちゃった。
「いいです。俺が悪いんすから」
「でも、ごめんね」
先ほどは持田を打った手が、今度は労わるように添えられる。
その掌の温もりに、持田は思わず泣きそうになった。



***
たまには怒られる持田でも。

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