選択課題・ベタ

獣の耳が生える
(深作×達海/ジャイアントキリング)

※死にネタですので苦手な方は回れ右。


他の動物の遺伝子が混ざった人間が実在することを深作が知ったのは、随分幼い頃のようだった気がする。
テレビの特集を見て知った彼らの存在は、深作にとって都市伝説のような存在だった。
テレビでたまに見かける、目の前には居ないヤツラ。そんな認識だった。
達海猛と出会うまでは。
「フカさん、撫でて」
昨日まで普通の人間の耳だったはずのそこを今は猫の耳に変えた達海が真顔で言う。
今はズボンで見えないが、恐らく尻尾も生えているはずだ。
「自分で撫でてろ」
冷たく言い放っても「はあ?何言ってんの」と見下すように達海が深作を見た。
「フカさんじゃないと嫌なの。なんでわかんないの」
この猫化した達海というのは厄介だ。
普段の達海とは違い、とても高飛車で高慢だ。
そのくせ全身で甘えてくるものだから、こちらもどう対応していいか未だに測りかねる。
「お前撫でると発情するだろうが!」
「撫でなくても発情してるよ」
「尚悪いわ!」
達海が猫化するのは発情期のみだ。
周期は年に四回ほど、期間は一週間程度と深作は把握しているが、他の彼らのような人種全てがそうであるのかは知らない。
猫化した達海はごろごろと喉を鳴らしながら深作に擦り寄ってくる。
そして撫でろと要求してはそのままセックスになだれ込もうとするのだ。
「いいじゃん、それがフカさんの仕事なんだから」
深作は政府によって達海のパートナーとして認められている。
そのために、この時期は試合に出なくてもそれ相応の報酬が出る事になっていた。
「…なんで俺なんだよ」
深作はその事実を二年経った今でも未だに認めていない。
達海によって勝手に登録されたのだから尚更だった。
ある日突然達海が政府の人間を引き連れてやってきて、「フカさん、俺のパートナーに決定ね」とのたまったのだ。
「ホントは誰でもいいんだけど、手近な所でフカさんかなって思って」
達海の言い分に当然、反発した。
少なからず達海を想っていた深作にとって、それは逆にプライドを逆なでするものだった。
しかし深作が了承しなければ他の誰かを選ばなくてはならないと言う達海の言葉に深作は折れた。
他の誰かに達海の乱れた姿を見せるなんて考えたくも無かった。
「何度言ったら分かるの。フカさんじゃないと嫌なの」
「だから、何で俺じゃないと嫌なんだよ」
「……」
達海は不機嫌丸出しの表情で黙り込むとぷいっとそっぽを向いてしまう。
深作でないと駄目だから、とそう繰り返すばかりで達海はその言葉の真意を口にしない。
もし達海が自分と同じ気持ちであるのならそう言って欲しかった。
そうすれば、この関係ももう少し楽なものになったかもしれないのに。
けれど達海は黙り込んだままだ。
達海に想いを告げてない自分も人の事は言えないのだが。
あくまで自分達は契約で結ばれた関係であり、恋人同士ではないのだ。
「…もういい。後藤のとこ行ってくるから。フカさんなんて知らない」
「ちょ、達海!」
すっくと立ち上がって部屋を出て行こうとする達海に深作は慌てて声をかける。
「後藤は京都だろうが!第一その姿で外に出る気か!」
「知らない」
すたすたと玄関に向かう達海を追いかけて引き止める。
「わかった、わかったから行くな」
すると途端達海はにんまり笑って深作を振り返った。
「じゃあ撫でて」
また達海の思うままだ、と思ってもこればかりはもうどうしようもない。
深作は「とりあえずリビング戻るぞ」と溜息と共に言った。
「ベッドじゃないの?」
「あーもう分かったよベッドでいいからさっさとしろ!」




翌朝、目を覚ますと達海の姿が無かった。
玄関を確認すると、靴も無い。
コンビニでも行ったのだろうか?あの姿で?
そう思いながら着替えていると、インターフォンの音がして深作は玄関へと向かった。
「あ、どうも」
ドアの向こうに現れたのは、今では顔なじみとなった達海の担当者である女だった。
「達海なら今出かけてますけど」
すると担当者は何の表情も乗せないまま深作に告げた。
「達海さんはお亡くなりになりました」
「……は?」
「今朝方、研究室の方へおいでになり、そのままお亡くなりになりました」
ばかな、と深作は呟いていた。
「だって、アイツ、昨夜まで元気にしていましたよ」
深作の引き攣った笑みに、担当者の女は研究室へお越しいただいて宜しいでしょうか、と告げた。
「はあ…わかりました」
最早深作にはそう頷くしかない。余りの展開に、頭がついていけなさそうだった。


寿命です、と彼女は研究所へ向かうまでの車内で言った。
「寿命って、達海はまだ二十五だぜ」
深作の言葉に、けれど彼女は首を横に振った。
「他の動物の遺伝子が混ざった人たちは短命なんです。平均しておよそ三十歳」
余りにも短い平均寿命に深作の息が詰まる。
「しかも達海さんの場合はあなたをパートナーにする二十三歳まで誰とも関係を持たず発情期を乗り切ってきました」
猫科の人間は特に性衝動が強く、無理に我慢すれば強いストレスとなって精神、肉体を蝕んでいくのだと担当者は言った。
そんな中、達海はずっと誰にも頼る事無く精神力だけで越えてきたのだという。
「どうして…アイツには後藤や他のヤツラがいたはずだ。そいつらだって良かったはずだ」
わからないんですか?と担当者は言う。
「あなたを愛していたからです」
担当者の言葉は、まるで宇宙人の言葉のように深作には届いた。
「私達は一刻も早くあなたをパートナーとするよう、彼を説得しました」
けれど出会ったばかりの深作にパートナーを申し出ても意味が無いのだと彼は言っていた。
「達海さんは言っていました。深作さんが自分を好きになってくれるまで待つと」
そうして三年。彼はずっと耐えてきたのだった。
「しかし彼にとって三年は余りにも長すぎました。達海さんは自分の寿命が近いことを感じていたのでしょう」
だからあんな強硬手段に出たのだ。
無理矢理深作をパートナーにして、余生を深作と過した。
それは完全なる彼の自己満足であったが、彼はそれでいいのだと笑っていたそうだ。
「じゃあ、最初から達海は…?」
「そうです。最初からあなた以外と番う気はなかったようです」
「そんなこと…」
不意に着きました、と言われて何が、と思う。
そうだった、ここは車の中だった。今は研究所へ向かう道すがらだったのだ。
どうぞ、と案内されるがままに車を降り、何枚もの扉を潜って中へと向かう。誰とも擦れ違わないのが不気味だった。
「…達海は、どうしてるんですか」
「今は霊安室に安置されています」
「逢う事は、出来ますか」
「出来ません」
静かに彼女は言い切った。
「何故ですか!」
「これは達海さんの意志です」
「達海の?」
「魂の入ってない抜け殻を見ても仕方ないだろう。そう達海さんは言ってました」
けど、と反論するより早く「ここです」と彼女が一枚の扉の前に立った。
「どうぞ」
促されるがままに中に入ると、そこには一台のベビーベッドが置かれていた。
中には赤ん坊が一人、すやすやと眠っている。
「この子は…?」
「達海さんから採取した精子を使って産まれた達海さんの子供です」
言われてみれば確かに達海の面差しを持っているように思えてくる。
つんと突き出した唇なんてそっくりじゃないか。
「達海さんがお亡くなりになった時点であなたとの契約は終わりました」
けれど、と彼女は続ける。
「もしまだ達海さんと関わっていたいのであれば、この子を養女として迎えませんか」
彼女の申し出に、深作はじっと赤ん坊を見下ろした。
「…俺が、育てていいんですか」
「上の許可は貰ってありますから構いません」
フカさん、と脳裏に達海の笑顔が甦る。
もう一度、あの笑顔が見られるのなら。
「…よろしくお願いします」
すると彼女はどこか安堵したような顔をしてわかりました、と頷いた。
「私達も全力でサポートさせていただきます」
「それで、この子の名前は?」
みあ、です。と彼女は言った。
「深く愛する、と書いて深愛、です。…達海さんが名づけました」
「深愛…」
その名前に、全てが籠められている気がして深作は口元を手で覆った。
フカさん、フカさん。
達海の声が今もはっきりと甦る。
俺はフカさんじゃなきゃ嫌なの。
その言葉の裏にあるものを、自分は知ってはいなかったか。
けれどどうしても彼自身からの言葉が欲しくて見ない振りをしていたんじゃないのか。
本当に大切なものは、たった一言の言葉なんかじゃなかったのに。
「達海…」
喉の奥が痛み、目の前がぼやけてくる。
自分が素直になっていれば良かった。
そうすれば、達海ももっと幸せな人生を送れたかもしれなかったのに。そう思うのは傲慢だろうか。
達海を幸せにすることが出来たのは自分を置いて他ならなかったのだと。そう思っても良いのだろうか。
「後悔するのなら、その分を彼女に注いであげてください」
「…深愛」
そっとその名を呼ぶと、ぱちりと深愛の瞳が開かれた。
吸い込まれそうなほど真っ直ぐに見つめてくる瞳に、やはり達海の子だと深作は思う。
手を伸ばすと、小さな手が深作の指を握った。
「お前は今日から俺の娘だ。俺と、達海の娘だ…」
深愛が、きゃあと声を上げて笑った。



***
なんでこんな事になったんだっけ…(爆)





女体(男体)化する
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

※前中後の中と後の間くらいです。


美幸が産まれて三ヶ月。二回目の女性化の日。
漸く達海に性行為の許可が出た。
今までは出産後の体調の関係から性交渉は一切禁止と言いつけられていたのだ。
それが、解禁。
達海は美幸を抱いて急いでクラブハウスへと戻ると、後藤の元へと向かった。
後藤は事務所で一人パソコンになにやら打ち込んでいる最中だった。
「後藤!」
「お。お帰り。検査はどうだった?」
「順調。美幸も元気。それより後藤」
達海はにししっと笑って後藤の耳元に唇を寄せる。
「セックスしてもいいってさ」
「ぶっ」
後藤が噴き出す姿に達海がけらけらと笑う。
「達海!」
「だって本当にそう言われたんだもん」
達海と後藤が共に生きていこうと決めたのは美幸が胎に居る事から端を発している。
つまりは二人は未だキス程度の清い仲だったりする。
そんな二人に漸く訪れたこの機会に達海は楽しそうな表情を隠そうともしない。
逆に後藤はと言うと、顔を赤くしてしどろもどろだ。
「その…本当に良いのか?」
「何言ってんの、今更」
一線を越えることに達海には躊躇いはないらしい。
それが後藤には嬉しいような恥ずかしいような。
「最中に美幸が目を覚まさないよう祈っておけよ」
そう笑う達海に、後藤はぐう、と喉の奥を鳴らしたのだった。



***
何て色気のない初夜話!あ、まだヤってないか。(笑)





浮気と誤解する
(村越×達海/ジャイアントキリング)

きっかけは些細な事だった。
達海が後藤に頭を撫でられていた。ただそれだけだ。
けれど達海のその子供のような笑い顔に何とも言えない気分になった。
村越の前では常に余裕を湛えた笑みで以て対するのに、あの無邪気な笑顔は何なのか。
村越は辛うじて達海の恋人というポジションを得ていたが、その自信は無いに等しい。
もしかして、自分は遊ばれているだけで、達海の本命は後藤ではないのだろうか。
そんな事すら思ってしまう。
駄目だ、マイナス思考になっている。
村越は緩く首を横に降るとロッカーへと向かった。
その後ろ姿を達海が見つめていただなんて知らないまま。
村越は一つ、溜め息を吐いた。



***
村越はでかい図体でぐだぐだしているのがいい。





記憶喪失になる
(成田×達海/ジャイアントキリング)

酔って記憶を飛ばした成田に達海は不機嫌そうに言った。
「でもホントに覚えてないの?」
こんだけ派手に噛み付いておいてさぁと示された先には腕に肩にとついた歯型。
「…すまん」
すると達海は「もー」と言ってベッドに寝そべる。
「俺あんなこと言わされたの初めてだったのに」
「…何を、言わせたんだ」
達海はにっと笑うとするりとシャツを捲り上げた。
その手がくりゅりと胸の突起を潰して、思わず成田の喉が鳴る。
「知りたい?」
「…知りたい」
ぺろりと唇を舐める達海の上に圧し掛かると、「じゃあ教えてあげる」と達海が笑った。
「今度はちゃんと覚えていてね?」



***
「記憶喪失」の続き。





女装(男装)させられる
(杉江×達海/ジャイアントキリング)

コレ着てください、と杉江が取り出したのは、一着のチャイナドレス。
「………」
達海は思わずまじまじとそれを見下ろしてしまった。
黒地にピンクの花模様の入ったそれ。
「…どったのコレ」
達海はとりあえず一つずつ疑問を解消していくことにした。
「買いました」
「いやそれは分かるけど。どのツラ下げて買ったの」
「通販です」
「…ああ、そう。で、何で俺が着るの」
「俺が達海さんが着てるところを見たいからです」
「…スギってコスプレとかで燃えるタチなの」
「今まではそんなこと無かったんですが、見てたらつい」
つい、じゃない。
「ちなみにこんなものもあります」
紙袋から更に取り出されたのは羽ストール。
「…なんでそんなの買っちゃったのかなスギは」
よよよと涙を拭う仕草をしながらへたり込むと、扇子の方が良かったですか、と返される。
「そういう問題じゃないよスギ…」
「ということで、着て下さい」
「…着ないと駄目?」
「着て欲しいです」
「…その言い方、ズルイ」
ずいっと差し出されたそれを、達海は覚悟を決めて受け取った。



***
チャイナは女装に入るのだろうか。

戻る