さみしがりな君へ5のお題
夜露に濡れた仔猫 (後藤×達海/ジャイアントキリング) 達海は人間だ。けれど同時に猫でもあった。 人の服を脱ぎ捨て、猫の姿になって夜空の下を歩く。 注意事項は一つ。人の多い場所は行かないようにする。 この姿で人前に出て良い事などありはしない。 達海は今日も夜闇に紛れて散歩をする。何者にも縛られない自由な時間だ。 けれど今日は邪魔が入った。 「こら、達海」 遠くから聞こえた声に見つかった、と思う。 ぴんと先だけ黒い尻尾を立てて振り返ると、後藤が息を切らせてやってきた。 「お前、あれほど、その姿で、勝手に出かけるなって、言ってるだろ」 「にゃあ」 年取ると体力無くて大変だね。 そう言ったのが伝わったのか、「今絶対何かムカつくこと言っただろお前」と眉を顰めた。 それには答えずにただ見ていると、後藤は一つ溜息をついていつものちょっと困ったような笑顔を浮かべて手を差し伸べた。 「おいで、達海」 仕方ない。今日は素直に応じてやるか。 どうせこの足では走れないのだ。経験上、撒くのは困難だと知っている。 達海が後藤の足元に近付くと、ひょいと抱きかかえられた。 「さあ、帰ろう」 *** タッツニャー?ネッコミー?まあいいや。(爆) 怖がらないで、甘えてごらん (深作×達海/ジャイアントキリング) 「ねえ、偶にはフカさんも俺に甘えてよ」 達海がまた面倒な事を言い出した。 深作はそう思いながら苦虫を噛み潰したような顔で達海を見る。 「うわ、何その顔。そんなに難しいこと言った?俺」 「難しいとかそういう以前の問題だ」 「何でだよ。簡単じゃん」 こうして、と達海が深作の肩に己の頭を預けた。 「ぐるぐるーってすればいいだけじゃん」 肩に頬擦りして甘えてくる達海に、深作は言葉を探す。 「…そういうのは、お前がやってればいいんだよ」 すると達海は顔を上げ、きょとんとして深作を見た。 「それって、もっと甘えていいってこと?」 「…うるせえよ」 深作の悪態に、けれど達海は嬉しそうに笑って深作に抱きついた。 *** 結局やってることはバカップル。 放っておけない (後藤×達海/ジャイアントキリング) 「後藤は何でそんなに俺の世話焼くの」 後藤はちょっと考えた後、性分かな、と笑った。 「お前みたいなの、放っておけないんだ」 すると達海はふうん、と自分で聞いておきながらどうでも良さそうに返事をした。 「達海?」 「…じゃあさ、後藤は俺がちゃんとしたら他の手のかかるやつの方へ行っちゃうんだ」 どこか冷めた声音に、後藤はそういうわけじゃないさ、と達海を抱き寄せる。 「性分ってのもあるけど、何よりお前の事が好きだから、お前を構いたいんだ」 わかるか?と問えば、よくわかんない、と応えが返ってきて後藤は苦笑した。 「今はわかんなくていいよ。少しずつ、教えていくから」 「…やらしいことも?」 後藤はぐっと言葉を詰まらせると、あー、と間の抜けた声を出した。 「それは、一緒に覚えていこう」 後藤のしどろもどろな答えに、達海は喉を鳴らして笑った。 *** 恋愛下手なタッツと頑張りたいゴトさんの付き合い始めをイメージしてみた。 躊躇いは捨てろ (杉江×達海/ジャイアントキリング) 杉江と一緒にいる自分は余り自分らしくないと達海は思う。 杉江の一挙一動が気になるし、その唇が開かれるたび何を言われるかどきりとする。 何かを話そうとしても二の足を踏む。 そんなの、自分らしくないし、杉江だってそんな達海といても楽しくないだろう。 「達海さん、何かつまらないこと考えているでしょう」 「つまらないって何だよ。俺はただ…」 ほら、またこうして言葉を詰まらせてしまう。 すると杉江は微かに笑って手を繋いできたものだから達海の肩がぴくりと揺れた。 「待ちますよ。達海さんが慣れるまで」 指と指が優しく絡み合うのを達海は俯き加減で見つめている。 「何だよ、慣れるって」 「知ってます。達海さんが俺と二人きりになると緊張してるの」 「…緊張なんてしてない」 「緊張じゃないなら、男と付き合うことへの躊躇ですか」 「……別に躊躇なんてしてない」 「素直に言ってくれて良いんですよ。元々俺が無理矢理口説き落としたものですし」 「……」 僅かに自嘲気味なその声音に、達海は開きかけた唇を閉じ、やがて決意したように唇を開いた。 「…落とされる事を願ったのは、俺だよ、スギ」 杉江がこちらを見ているのが分かる。 けれどもう、躊躇うのは止めよう。達海は握られた手を握り返す。 「俺、まだ言ってなかったよね」 「何をですか」 「俺もスギの事、好きだって」 杉江が息を呑むのが聞こえて、達海は少しだけ笑った。 *** 「散歩をする」より前なのか後なのか。恋愛におどおどしてるタッツに萌える。 いつでも近くにいるよ (後藤×達海/ジャイアントキリング) 「いつでも近くにいる。ずっとお前の傍にいる。誓うよ」 後藤は真面目な顔をしてそんな恥ずかしい事を言う。 そんなもの誓わなくていい、と達海は思う。 誓おうと誓わなかろうと、人は変わってしまう時は変わってしまうものだ。 だったら最初から誓いなど立てないほうが良いに決まっている。 けれど後藤は違うらしい。愚直なまでにそれを守ろうとする。 自分には真似できないことだと達海は思う。 だからそんな後藤にはせめて。 「後藤、愛してるぜ」 今だけの真実を、素直に伝えることにしよう。 *** 永遠なんて信じちゃいないけど、今がずっと続けばいいと思うくらいには愛してる。 |