強がりな君へ5のお題

決して独りにはしない
(後藤×女達海/ジャイアントキリング)

※前中後の中くらいです。


本当にそれで良いのか、と問えば、達海は仕方ないと俯いた。
その言葉の裏側には、産みたいという言葉が見え隠れしていて後藤は思わず言っていた。
俺と二人で育てよう、と。
後藤は達海の事が好きだった。何よりも愛していた。
だから達海の意を汲んでやりたかったし、達海の喜ぶ顔が見たかった。
何より、一人孤独に堕ちていこうとする達海を止めたかった。
お前の子供じゃないんだぜ、と窺うような問いかけなど意味を持たない。
達海が宿した命だ。どうして慈しまずにいられようか。
唯一つ、気になるのは達海の村越への気持ちだった。
口では感情はないと言いながらも、どこかそれ以上のものを感じた。
きっと達海は村越を少なからず思っているのだろう。
本当なら後藤がするべきは、村越との間を取り持つことなのかもしれない。
けれどそれが出来るほど後藤は寛容ではなかった。
そこにどんな思惑があれ、愛する者が自分の手を取ろうとしている。
それを阻むことなど後藤にはできやしない。
自分がこんなに狡い人間だったなんて、と今更思い知る。
村越、ごめんな。後藤は達海を抱きしめながら思った。



***
後藤視点。みたいな。





強さ故に、孤独
(羽田×達海/ジャイアントキリング)

達海は精神面の強い人間だと羽田は思う。
彼なら一人でも十分生きていけるんじゃないかとすら思う。
けれど彼は羽田をパートナーとして選んだ。その理由が未だに羽田には分からない。
しかし時折見せる彼の弱さや、甘えた仕草。
それらが羽田にしか見せないものだと思うと、歓喜で背筋がぞくりとする。
あんなに強い男が自分にだけ内面を開くなんて。堪らない。
だけど独占欲なんて見せたくない。支配欲なんて持ちたくない。
彼は元々一人で立っていた人間だから、羽田がそんなものを振りかざせば彼は即座にまた独りに戻るだろう。
だから、これ以上は踏み込まない。踏み込んではいけない。


羽田は精神面の強い人間だと達海は思う。
彼なら自分と一緒に生きていけるんじゃないかとすら思う。
だから達海は羽田をパートナーとして選んだ。その理由は未だに羽田に伝わっていないようだ。
時折弱さを晒してみたり、甘えてみたりするのだけれど。
羽田が思っているほど強い人間ではないのだと、どうしても気付いてくれない。
羽田の葛藤を達海は知っていた。
独占欲なんて似合わない。とか。支配欲なんて柄じゃない。とか。
達海は独りで立つことしか出来なかった人間だから、そういったものに憧れる。
もっと、独占して欲しいのに。支配されたいのに。
強さの勘違いが、また達海を孤独にする。



***
好きで孤高なんじゃない。





人を拒絶する弱さ
(深作×達海/ジャイアントキリング)

あいつの好意が本物かだなんて本当は最初から気付いていたんだ。
だけどそれを認めるのが怖かった。
それを認めてしまったら、今度は自分の中の感情と向き合わなくてはならなくなる。
第一段階。あいつが俺を好きだって言うのを認める。
第二段階。あいつの事を俺自身がどう思っているかをちゃんと考える。
第三段階。さて、答えは?
そんなの怖すぎるじゃないか。
だって俺と達海は男同士で、仲間で、問題だらけじゃないか。
そんなものと向き合いたくない。
非常識や非日常なんて言葉は俺の隣に立たなくていい。
俺は普通でいい。当たり前でいたいんだ。
そうこうしている内にあいつは俺の前からいなくなった。
ほっとした。はずだった。
何故だろう。
どうしてこんなに哀しいのだろう。
哀しい、悲しい。
第三段階。さて、答えは?
そんなもの、最初から知ってたさ。
俺のバカヤロウ。



***
普通にしがみ付いた結果の喪失。





泣け
(成田×達海/ジャイアントキリング)

泣けよ、と成田は達海を抱きしめて言った。
泣かないよ、と達海は成田の腕の中で笑った。
怪我はもどかしいし、選抜辞退は悔しいけど、でも泣かないよ。
泣いたら成さん、あたふたしちゃいそうだし。
しないから泣けよ。むっとした声。
やだよ。しつこいなあもう。くすくすと笑う。
俺が泣くのはエッチの時だけなの。
今はそういう話してるときじゃないだろ。
今じゃなくて、いつするの?
それは、その。成田が口篭る。
ほら、今でいいじゃん。ね?顔を上げて口付けを強請った。
俺を泣かせたいなら、ベッドへ行こう?
む。成田が逆らえるはずも無かった。



***
泣かせて、鳴かせて。





いつでも君と、共に在る。
(杉江×黒田×達海/ジャイアントキリング)

杉江と黒田が何か話し込んでる。
そんな姿を最近よく見る。
でもこっちと目が合うと何事もなかった様にふいっと逸らされる。
そういえばここ数日は誘っても何だかんだで断られてたなあ。
とうとう、その時がきたのかな。
三人でオツキアイを初めて一年ちょっと。うん。もった方だ。
うん。
だから、仕方ない。
もう、あいつらを解放してやろう。
達海はそう思って二人を自室に呼び出した。
「ね。何か俺に話すこと、ない?」
すると二人は顔を見合わせ、杉江が小さく頷いた。
「俺、クロに達海さんを譲るつもりでした」
「うん」
「だから身を引こうって思って」
「うん」
「でも止めました」
「…うん?」
あれ?何か想像してたのと違う展開が。
「俺たちはこれからもアンタの傍にいます」
おかしい。予定と違う。
「…クロは、それでいいの」
すると黒田は鼻を鳴らして仕方ねえだろ、と言った。
「結局俺らはアンタが好きなんだよ。だから離れるつもりはねえ」
おかしい。予定と違う。おかしい。おかしい。
だってほら、スギが身を引くって言い出して、じゃあ俺もってクロが言いだして、俺が一人になるんじゃないの?
そう言うと、黒田が嫌そうに顔を顰めて杉江が溜息を吐いた。
「なんでそう思うんだよ」
「だって、お前ら親友だろ」
杉江が達海をどこか哀れむような目で見た。
「愛情だって、友情と同じくらい強いんですよ」
「違う、愛情は変わる。友情は変わらない。だから友情の方が強いんだ」
だからお前たちは永遠だけど、俺とお前たちは一瞬なんだ。
子供のように首を横に振る達海に黒田はちっと舌打ちした。
「アンタどんだけ愛情不信なんだよ。いいか、よく聞け」
黒田が達海を指差して言う。
「愛情が変わるもんなら友情だって変わるもんなんだよ。だけどそれを変わらねえように努力するのが大事なんじゃねえのかよ」
だって、と達海は呆然としたように呟く。
「だって、どうしていいのか分からない。そんな努力、したことない」
「好きでいてくれれば良いんです」
杉江が微笑う。
「俺とクロの事、毎日好きで堪らなくなってくれればそれでいいんです」
「それだけ?」
「当面は、それだけで良いです」
少しずつ、教えていきますから。
すると達海はうん、と頷いた後、でもと黒田を見た。
「スギはともかくクロに何かを教わるのは癪だなぁ」
「なんだとコラ!」
笑顔の戻った達海に、杉江はほっと息を吐く。
この人の泣きそうな顔は心臓に悪い。
達海にはもっと笑って欲しい。笑顔を見せて欲しい。
これからは体ばかりの関係では無く、もっと心を通わせた関係を築いていきたい。
それがここ数日で黒田と共に出した結論だった。
課題はまだまだ山積みだけれど、一つずつこなして行けば良い。
「あーもう二人ともいい加減にしろよ」
そう言いながらも杉江の頬は緩んでいた。
さあ、全てはこれからだ。



***
恋愛においては諦め癖の付いてるタッツとそれを何とかしたい二人。

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